2018年6月23日 (土)

「ザ・ビッグハウス」:船頭多くして・・・

363641_001
『ザ・ビッグハウス』は、想田和弘をはじめ17人の監督による記録映画。まあ、想田のワードを用いれば「観察映画」です。でもエンドタイトルで、“Directed by・・・”の下に人名がずらずらと出て来た時には(しかも2枚にわたって)、なんだこりゃ?と驚いてしまいました。資料によると、17人の映画作家たちが自らカメラを回して作った作品なんですね。そのうち13人は学生だったそうですが。

363641_002

この映画で描かれているミシガン大学のスタジアム、通称「ザ・ビッグハウス」って、いつも10万人以上の観客で埋まるんだそうです( 映画内では11万人以上が入ってました)! 新国立競技場なんて、8万人にする計画が「多過ぎる」とかいちゃもんつけれれらて、減らされちゃいましたもんね。

363641_005
そういえば、このスタジアムって、一層だけで高い所まで客席があるタイプなので、旧・国立競技場に似たタイプです。ただ、フットボール専用スタジアムなので、陸上トラックとかはありませんし、傾斜がかなり緩そうなのが気になります(ピッチから遠い客席が出来てしまうのです)。

1試合だけを扱うのかと思ったら、2試合+αを扱っているので、それを時系列で出すので、1ヤマ終わって、また・・・って感じで、なんだかボケてしまいます。ここは映画としての弱点でしょう。

363641_011
また、描かれる題材も撮り方も玉石混交で、見ごたえある部分もあれば、冗長なものもあるし、ヘタなキャメラ・無意味なショットでイライラする場面もあります。基本的にアメフトの試合は(ほとんど)写していないのですが、その姿勢はいいとして、それでもチラッと写っているプレイの映像が不出来で、中途半端でがっかりなのです。調理センターみたいな所のシンクにキャメラを置いて、洗う人を見上げたアングルで撮った映像など、まったくのところ学生っぽい無意味な思い付きでしかありません。だめだこりゃ。

全体的には残念ながら、バラバラ&ツギハギ過ぎて、1本の作品としてまとまってはおりませんでした。その混沌から浮かび上がって来るものも、唸るほどのものではありませんでした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年6月22日 (金)

「万引き家族」:是枝さんの力、役者の力

363357_004
映画『万引き家族』は、カンヌのパルムドール受賞にふさわしい社会性と問題提起たっぷりの力作。しかも2時間しっかり面白く、技術パート、演技陣も一級の仕事。近年は快調に高いレベルの作品を連打してきた是枝裕和監督ですが、モチーフ的にも是枝家族映画の集大成となっていて、見事でした。うまいなあと思いました。

363357_002

社会問題てんこ盛りでありながら、娯楽映画の範疇でも成功しているのが是枝さんの偉いところ。自分で脚本も担当していながら、切れずにやたら長いという陥穽に陥っていないのは、編集も自分でやってるからなのでしょうか。

キャメラ(近藤龍人)がいいです。映像のルックが、多くを語っています。 そして、音楽も作品に似合っていて素晴らしい、誰だろう?と思ったら、細野晴臣さんでした。なるほど。

363357_003
そして役者たちがここまでみんな揃って素晴らしいことって、なかなかありません。中でも、カンヌでケイト・ブランシェット審査員長が絶賛した安藤サクラの泣き方が圧巻でした。確かにあれは凄い。その後の笑顔も含め、心を揺さぶりまくります。

リリー・フランキーの細っこい裸体が、なんかヘンでした。昔の日本の『餓鬼草子』とか、ヒエロニムス・ボスの『快楽の園』とかに描かれていそうな感じ。

363357_006
いつもと違う感じの樹木希林さんも、役者としての優秀さを改めて感じた松岡茉優も素晴らしいですが、何と言っても二人の子供たちが見事。やっぱり是枝さんって、稀代の「こども使い」だなあ。特に男の子(城桧吏)の「目」が凄かったです! ほんと、将来が気になる子でありました。

2010年代の日本を描き、観る者の心にスクラッチを残し、多くの事を考えさせる・・・やはり4K(北野武、黒沢清、河瀨直美、是枝裕和)の中で一番骨太で正統派の映画作家ですね、是枝さんは。 本作の大ヒットを見るにつけ、まだまだ日本人って捨てたもんじゃないと思いました。

| | コメント (0) | トラックバック (6)

2018年6月20日 (水)

今日の点取占い282

Dsc_2701
もう何が何だかわからない   4点

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年6月19日 (火)

西野ジャパン、コロンビアに勝っちゃった!!!

2018FIFAワールドカップ・ロシア大会の日本の初戦=コロンビア戦。先発メンバーは概ね予想通りでしたが、センターバックで吉田と組むのが槙野ではなくて昌子だってのが意外。コロンビアはハメス・ロドリゲスが先発を外れてくれたのが、ありがたい。本田も先発を外れてたのが、ありがたい。

で、前半3分のラッキーなレッドカード(まあ手による決定的な得点機の阻止なので、レッドでいいんですけど)で6分に香川が決めたPKで先制! しかも相手はいきなり10人に! でもコロンビア相手なんだから、ちょうどいいぐらいのハンディキャップでしょ。 しかしながら39分に、今度はアンラッキーなFKから失点。1-1で前半を終えたわけですが、日本、ちょっとパスミス多過ぎでした。ほとんどパスがつながらず、10人になった相手がプレスをかけて来なくなったので、助かった感じ。 それと・・・乾も大迫も、決めとけよなーー!!

しかし後半は10人のコロンビアもどんどん疲弊していき、日本がボールを支配しまくり。だけど、いくつもの決定機を相変わらず決められません。でも73分に本田のCKを大迫が頭でたたき込んで2-1! 普通なら、残りの時間がもっとハラハラドキドキになるのですが、もうコロンビアに力が残っていなかったので、日本が楽にボールを回すことが出来て、とにかくリスクを冒さずに時計を進めていきました。5分と長いアディショナルタイムの後には、望外の勝ち点3が待っていました! いやー、驚いた。希望的観測で「勝ち点1が取れればいいなあ」と思っていたのに、まさかの勝利とは! 西野さんってやっぱり「奇跡を起こす男」なんですねえ。大いなるアップセット(番狂わせ)でした。

ただ最後まで日本のパスはミスが多く、お恥ずかしい限りでした。サイドチェンジのボールの多くは長過ぎてタッチラインを越えて行きましたし。 また長友と乾の息が合わない場面が後半途中までやたらとあって、頭を抱えました。 それと、途中出場の本田はCKで得点をアシストしたものの、それ以外はミスも多く、ポジショニングも悪く、足は遅く、あんまり役に立っておりませんでした。 あと川島、飛ぶ所が違うだろー(最初からゴールライン割ってるぞー)。

最終的には相手が10人だった事に大いに助けられました。ハリルホジッチ擁護派、田嶋会長反対派の大江戸としては複雑なところもあるのですが、いずれにせよたっぷり楽しませていただきました。やっぱりワールドカップは特別ですね。あと2試合で終わらずに、もっと楽しませていただきたいものです。2試合目のセネガル戦は、たぶんメンバーを相当替えて来ると思うんですよね。試合感覚のない中、勝ち抜くための西野流マネージメントってやつです(ま、ほかの監督でもやるでしょうけれど)。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年6月18日 (月)

「羊と鋼の森」:清く正しく美しく

362261_001
映画『羊と鋼の森』は、調律師という珍しいフィールドを舞台にした「仕事映画」であり、ビルドゥングスロマン(成長物語)。上品で、まじめで、「文部省推薦」になっててもおかしくないような作品でした(あ、今は文科省か)。主役の山崎賢人の好青年ぶりも、その傾向に拍車をかけています。

362261_003

山崎に限らず、登場人物がみんなまじめでいい人です。光石研はちょっとひねくれてたけど、最後はかなりいい人。城田優だけが、ちょっと感じの悪い人でした。 中でも、風格のある堂々たる「いい人」だったのが、三浦友和。三浦さんってしばらく前はけっこう崩れた役、悪い役にチャレンジしていたようですが、最近はまた本筋の「正しい人」の役に戻っているようです。やっぱりこっちですよね。これだけ「正しい人」のオーラが出てる人って、なかなかいません。

362261_005
映画の中の姉妹を、上白石姉妹が演じているってのも結構でした。上白石姉妹のお母様って、ピアノの先生なんですってね!(ただし二人ともほとんど習っていないそうでですけど) びっくりです。

作品としてはまずまずなのですが、調律について、もう少し掘り下げて具体的に描いてもらいたかったですねえ。その方が映画の力にもなったのになあと思いました。

362261_006
まあ、「音」というものを映像で表現するという難題(もちろん音はついているわけですが)に挑んでいるわけで、森の映像、水の映像などを使って美しく描き出してはいますが、こちらの想像を超えるほどのものはなく、そこらがちょっと物足りない所ではありました。テストで75点を取るまじめな生徒って感じで・・・。

| | コメント (0) | トラックバック (3)

2018年6月17日 (日)

「終わった人」:シニア映画の先がけ

T0022242p
映画『終わった人』は、おととし『さらばあぶない刑事(でか)』で刑事を定年退職した舘ひろしが、今度は一流銀行の子会社を定年退職して・・・という話。舘さんももう68歳なので、(若く見えるとは言え)十分そんな年齢なんですね。

監督は「ホラーの巨匠」中田秀夫。でもこの人、本当は人間ドラマやコメディの道に進んだ方が良かったのかもなんて、ちらっと思ってしまいました(顔もお笑い芸人っぽいし)。それぐらい安定感のある堂に入った演出で、けっこう松竹映画のカラーだなあって感覚もありましたね(本作は東映配給)。 そういえば、作品内で主人公の田代(舘ひろし)が、東大卒のエリートだってことで揶揄されたりするのですが、中田監督も東大卒なんですよねー。そこで抜擢されたのではないかしらん??

Main

戦後長らく(’80年代ぐらいまで)日本の会社で定年と言えば55歳でした。現在は60歳から65歳に移行する過渡期であり、既に70歳定年の導入も見えてきています。そういう時代なので、この作品で63歳となっている主人公がまだまだ若くてやる気十分なのも当たり前。そんな主人公のあがきっぷりを楽しむ作品であり、社会的要素を取り入れたコメディとして、、まずまずの出来映えです。

原作者の内館牧子さんが、老人だらけのスポーツジムの場面にカメオ出演していらっしゃいました。そういえば、そんなジムのみならず映画館って所も、近年はかなりお年寄りの多い場所になって来ております。この作品の客席も、シニア比率が高かったです。そういった意味では、今後こういう映画が増えていく土壌はあるのでしょうね。

そうそう、主人公の回想する高校ラグビー部のいさかいが、ちょっと日大アメフト部問題を連想させてタイムリーなのでありました。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2018年6月16日 (土)

「夜の浜辺でひとり」:すごいぞ、ホン・サンス(キム・ミニも)

363566_003
映画『夜の浜辺でひとり』は、ホン・サンス×キム・ミニ4作品連続公開の第2弾。『それから』に次いで、これもいいです。たまらなく面白いです。やっぱりキム・ミニが輝いてます。

ドイツのハンブルクが「1」、韓国の江陵が「2」という二部構成ですが、「1」が序章という感じで短く、「2」の方が本編という感じで全然長くもあります。

363566_002

ホン・サンスとキム・ミニは実際にそういう仲なのですが、この映画の中でも監督と女優の不倫関係が描かれます。それがもうおのろけだったり、自虐だったり、自慢だったり、自己憐憫だったりと、リアルに虚実がない交ぜになっていて、とてもスリリングなのです。人によっては腹立たしくなったり鼻白んだりするのかも知れませんが、大江戸はドキドキしながら面白く観ておりました。

363566_004
『それから』でもそうでしたが、これだけ繊細な映画を作ってるのに、ズームやパンが雑! なんであんなにいいかげんで素人っぽい感じに動かすのか、謎です。 謎と言えばもう一つ、篇中に(ドイツにも韓国にも)謎の黒服男が何度か登場するのですが、あれはいったい・・・? プログラムには「彼女の感情のメタファー」と書いてありましたが、うーん、今一つ成功していないような気がいたします。

363566_001

長回しで捉えられる飲み会のぐだぐだ会話が、いつでもあれだけ魅力的な場面になるという名人芸においては、ホン・サンスって映画史上で最高峰なのではと思ってしまいますよ。同工異曲を常に高いレベルで見事に見せるってことにおいては、小津安二郎的と言えますし。いやー、これまでそんなに熱心に観て来なかったホン・サンスに、すっかりやられてしまった今日この頃です。

それにしても、まだ明るくて「夜」の浜辺には見えなかったんですけどねえ(「薄暮の浜辺」あたりではないかと・・・)。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2018年6月15日 (金)

「ゲティ家の身代金」:「ハンニバル」との共通点

362740_002
映画『ゲティ家の身代金』は、リドリー・スコットらしい重厚な娯楽作。これぞ正攻法といった展開と描写ですが、作品の最初と最後に「実話をもとに、映画的効果のため脚色を施した」というような意味の字幕が出ます。確かに「これ、どこまでが事実で、どこからがフィクションなんだろう?」と思わずにはいられませんでした。 原題は“All the Money in the World”。なるほどですね。

362740_007

母親役は、小生が勝手に「アメリカの本橋麻里」と呼んでいるミシェル・ウィリアムズ(当然、本橋麻里のことは「日本のミシェル・ウィリアムズ」と呼んでおります)。安定感のある演技です。そして大富豪ゲティの役は、ケヴィン・スペイシーのセクハラ降板を受けて、急遽再撮9日間のクリストファー・プラマー翁。それでオスカー・ノミネートの好演とは、まさに怪我の功名。でも、これは評価すべき演技ですよ。

362740_008
それにしても、金持ちってやつは・・・。まあ、常軌を逸していないと、あれだけの大富豪にはなれないのでしょうけれど。 一方、誘拐された孫が微妙にバカっぽくて、なんだか納得してしまいました。

362740_001

スコットがイタリアで撮った娯楽作ということで言えば、『ハンニバル』が思い出されますね。映像のルックも似ていると思います。そして、こちらはゲティ翁、あちらはハンニバル・レクターという怪物が出てるってことでも共通してます。ああ、かたや「頭蓋骨斬り」、こなた「耳斬り」ってことも共通してるではありませんか。

| | コメント (2) | トラックバック (5)

2018年6月14日 (木)

「それから」:人生だなあ

363565_001

映画『それから』を皮切りに、ホン・サンス監督×キム・ミニ主演の4作品が連続公開されます。第一走者の『それから』ですが、いやー、素晴らしかった。これまでホン・サンスって特に好きではなかったんですが、これには降参です。韓国のウディ・アレンと言われる彼がモノクロで作った、まさに『マンハッタン』のような作品(物語とかは全く違いますけど、ムードがね)。

363565_003

登場人物は少なく、場所も限られてる中での会話劇という、いつもながらのホン・サンス節。でも今回は、出来が良いです。不倫をめぐるすったもんだを、実にリアルに、実にオトナな感じで淡々と、時にユーモラスに描き、そこに「人生」を滲ませます。素敵です。おしゃれです。

363565_006

男女を描いた大人な映画ってことにおいては、成瀬巳喜男作品の匂いもありますね。確かにこの男のダメさやズルさを見てると、森雅之みたいですもん。関係ないけど、不倫相手の女がやけに小保方さんに似ておりました。 そしてキム・ミニがキュートで、独自の魅力を放っておりました。『お嬢さん』でも印象的でしたが、本作では抑制が効いていながら、内面からの光があふれるミューズとして屹立しております。

363565_005

「それから部分」というか、終盤の後日談パートも、とても効いています。「時間」が効いています。時は流れ、人は移ろうのだなあ、人生だなあって感じ。この成熟。見事です、ホン・サンス。こういう作家が韓国にいるってことは、ちょっとうらやましいことです。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2018年6月13日 (水)

「海を駆ける」:抽象的だけどありきたりで・・・

T0022350p
映画『海を駆ける』は、あるコミュニティーにおける異質な存在(侵入者)の物語を語り続ける深田晃司監督の新作。全編、インドネシアが舞台で、インドネシア人も多く登場するため、日本映画って言っていいのかちょっと迷うところでもあります。

ディーン・フジオカ演じる異人が、海=大自然であり、神でもありというような抽象的な物語を、抽象的なまま、でもストレートに提示します。ただ、あまりにもそのまんまというか、映画表現としてこなれていないようにも思えます。インドネシアが舞台で、「津波」という台詞もあるだけに、その意図するところがありきたりに見えてしまうという欠点があるのです。

Main

ディーンは、その浮世離れした透明感がキャラに合ってます。太賀と鶴田真由の流ちょうなインドネシア語には感心しました。

(以降ネタバレあり) ラストで一同が「海を駆ける」わけですが、特に感銘を受けるような「奇蹟」感はありませんでした。残念です。そこが勝負なのに。 水の上を歩くってことにおいては、ハル・アシュビー監督の『チャンス』(Being There)のラストを見習ってほしいものだと思いました。

| | コメント (0) | トラックバック (2)

«本田がいないとうまくいく