2024年12月 8日 (日)

「ロボット・ドリームズ」:それでも人生は続く    #ロボットドリームズ #パブロベルヘル #出会いと別れと記憶 #September

Robotdreams 映画『ロボット・ドリームズ』は、スペインのパブロ・ベルヘル監督によるセリフなしのアニメーション。この広告ビジュアルは控えめで地味ですけど、いやー、名作でした。

舞台は1980年代のニューヨーク。まだワールドトレードセンターのツインタワーは健在ですし、ドッグが飲んでいるのはTabです。EW&Fの『September』、『シャイニング』の双子の女の子、『エルム街の悪夢』のフレディ、キングの『ペット・セマタリー』、ミュージカル『42ndストリート』などなど、あの時代のしるしがそこかしこにちりばめられております。大江戸も初めてNYCに行ったのは1985年のことなので、あの時代の空気が感じられて嬉しくなりました。ザワークラウトの入ったホットドッグの屋台、いいですねー(プレッツェルも置いてあるし)。

単純な線のかわいい絵が、とてもフレンドリー。落ち着いた色もきれいだし。でも、街を的確に描いたり、表情のポイントをしっかり押さえたりしていて、かなりレベルは高いのです。

音楽や音はあるけど、言葉がないだけに、世界中の子供からお年寄りまであらゆる人にダイレクトに届く作品。素晴らしいことですね。単純な面白さから人生の哀感までを繊細に表現して、心に迫って来ます。メロドラマでもあります。出会いと別れと記憶。それぞれの新しいパートナー。それでも人生は続く。「古典」と言っていい名作です。

『September』、こんな感動的な曲でしたっけ?

 

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2024年12月 7日 (土)

「雨の中の慾情」:奇天烈で面妖でパワフル    #雨の中の慾情 #片山慎三 #成田凌 #つげ義春 

Amenonakanoyokujou 映画『雨の中の慾情』は、『岬の兄妹』『さがす』の異才・片山慎三監督による骨太の力作にして怪作。このゴリゴリのパワーは、やはり片山監督ならではです。

映像の画力が只事ではありません。映画の絵としての良さ、そして美しさと異様さ、独特の色彩。台湾ロケをたっぷり行っているのですが、昭和レトロ感漂う美術と共に、圧巻の絵作りとなっております。

つげ義春の同名原作に、他のつげ作品を混ぜ合わせて作り上げたそうです。ただ、つげ義春テイストよりも明らかに片山慎三テイストの方が勝っています。やけに力強いのです。なので主役に成田凌を持ってきたのでしょう。この人の「力弱さ」でバランスを取るわけです。毒消しですね。

それにしても、かなりぶっ飛んだ奇天烈で面妖な映画です。中盤以降は時制が入り乱れ、終盤にはしっちゃかめっちゃかになっていきます。(以降少々ネタバレあり) そして圧巻の戦場描写も!あの移動撮影! これが効いて、作品が深く大きくなりました。 でも、恋愛映画にして犯罪映画にして戦争映画、ポルノ映画風でありながら純文学映画風でありながら娯楽映画風な芸術映画って…。いやー、様々なジャンルを行き来しながら、不可思議な地点に到達していく映画です。

この作品、年間ベストワンに推す人が多そうな気がします。それだけ超越したものがあるのです。でも、大江戸も一定の評価はいたしますが、さすがに第1位にはしないかな…。

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2024年12月 6日 (金)

わかるやつだけわかればいい    #座右の銘 #名言 #金言 #あまちゃん #花巻さん #宮藤官九郎

わかるやつだけわかればいい

          花巻さん

一昨日に続き、『あまちゃん』からの名セリフ。伝説(?)のイベント「海女(あま)ーソニック」で、漁協の花巻さん(伊勢志摩)がフレディ・マーキュリーに扮して登場した時に、こう言いました。これって花巻さんのセリフであると同時に、脚本の宮藤官九郎が視聴者たちに投げかけているメッセージでもあります。

そうですよね。人間一人一人その歩みやバックグラウンドが違うのだから、ある人には馴染み深くても別の人にはさっぱりわからないってのが、よくあることです。いや、むしろ普通です。だから「わかるやつだけわかればいい」って気持ちでいれば、失望することも悲嘆することもないのです。少数の人に理解してもらえればそれでいいって考え方は健全だし、極めて現実的です。そんな時の少数の理解者ほどありがたいものはありません。

でも逆に、「わかるやつだけわかればいい」と開き直らないで、言葉と誠意を尽くして一人でも多くの人にわかってもらうことが必要な場面もあるわけです。まあ、それが人生ってもんでさあね。

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2024年12月 5日 (木)

「ゴンドラ」:遊びをせんとや生まれけむ    #ゴンドラ #映画ゴンドラ #ファイトヘルマー 

Gondola 映画『ゴンドラ』は、ドイツ、ジョージア合作のチャーミングな小品(85分)。全編セリフなしです。ファイト・ヘルマー監督はセリフなし映画を作り続けているそうですが、大江戸は初めてお目にかかりました。なかなかの個性です。

ジョージアに実在するゴンドラ(ま、ロープウェイですね)を使っての撮影。現在は新しい車体に替わったそうで、貴重な映像とも言えるわけです。山あいを行き交うゴンドラの映像が素敵すぎます。あの形、あのくすんだオレンジ色、あのロングショット。絵的にいちばん連想しちゃった映画は『アメリ』です(まああの映画ほど人工的にコントロールしてはおりませんが)。それにしても、よくこんな映画作ろうって思いましたねえ。

単調な往復運動なのに、仕事なのに、それをエンタテインメントに変えてしまった二人の女性。次から次へとあの手この手の瞬間芸が出て来ます。高所のゴンドラのドア開けっぱなしでそれをやるもんだから、結構危険なんですけどね。ま、ファンタジーですから。

観ていて、「遊びをせんとや生まれけむ」という言葉を想いました。どうしても遊ぼうとしちゃう二人の寓話、童話です。だから、何時間労働なんだ?とか、こんなにお客さんいなくて経営していけるのか?とかのツッコミは無粋ってもんです。

微妙な斜めの構図も多かったですね。それにしても、あの駅舎はキュートでした。

 

 

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2024年12月 4日 (水)

向いてないけど続けるっていうのも才能よ    #座右の銘 #名言 #金言 #あまちゃん #鈴鹿ひろ美

向いてないけど続けるっていうのも才能よ

              鈴鹿ひろ美

『あまちゃん』に出て来た名セリフの一つ。 大女優の鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)と付き人の天野アキ(能年玲奈)が寿司屋で話している場面で、アキが「で、どうですか、女優として天野アキは?」と訊くと鈴鹿さんは「ダメね。向いてない。」とバッサリ。でもその後で、「向いてないけど続けるっていうのも才能よ。」と付け加えるのです。

そうなんですよねー。人間、向いている仕事にすぐ巡り合えるものでもありませんし、そもそも何が向いているかなんて、しばらくいろんなことをやってみないとわからないものです。だけど向いてない仕事だとしても、やっているうちに面白くなってきたりします。どんな仕事の中にも自分なりの工夫の余地はあるし、そういった中に小さなやりがいが生まれてくるものなのです。「継続は力なり」って言葉もありますもんね。続けていればいいこともある。そうそう、「石の上にも三年」って言葉もあるじゃないですか。がまんし過ぎてはダメですけど、がまんしなさ過ぎももったいないと思いますよ。

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2024年12月 3日 (火)

コーヒー牛乳の世界    #コーヒー牛乳 #明治コーヒー #白バラコーヒー #高千穂牧場カフェオレ #タカナシカフェオレ #ジョージア贅沢ミルクコーヒー

Dsc_20012_copy_600x1004 カフェラテではないのです。あくまでもコーヒー牛乳。今回はその領域の製品をピックアップ。

まずはここが指標となるはずの『明治コーヒー』。昔の瓶入りコーヒー牛乳を引き継ぐ商品のはずなのですが、・・・うーん。久々に飲んでみると、なんか印象が違いますね。記憶にあるコーヒー牛乳の水割りみたいな感じが多少します。ミルキー感がないというか、スッキリし過ぎているというか、それでいてコーヒーっぽさは昔よりもあるという…。まあ、記憶が美しく作り変えられている可能性はありますけれど、ちょっと残念な気もいたしました。

 

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気を取り直して、次は鳥取県の『白バラコーヒー』。あのおいしい白バラ牛乳さんの製品で、生乳70%使用です。なのでさすがにおいしいですよね。昔の明治コーヒー牛乳って、むしろこっちに近いおいしさだったような気がします。

 

Dsc_17912_copy_600x738 お次は、宮崎県の『高千穂牧場 カフェ・オ・レ』。これはいいですよー。すっごくおいしい!  JR新宿駅構内の自販機で買ったのですが、その場で飲んで衝撃を受けました。あまりにおいしくて。商品名は「カフェ・オ・レ」ですが、いやいや高級のコーヒー牛乳です。ミルクにもコーヒーにもたまらないコクがあって、そのハーモニーが最高です。ちなみに生乳72%使用です。甘さも絶妙にちょうどいいのです。至福の味がします♪

 

Dsc_18433_copy_600x898 で、「まいばすけっと」で購入したこちらもかなりの高得点。高千穂牧場に迫るほどのおいしさでした。タカナシの『カフェオレ』。そうは言っても、カフェオレというよりも「理想のコーヒー牛乳」と言った方が正しい気がします。なんと、北海道産生乳80%使用だそうです。こちらもちょうどいい甘さ。いやー、よく出来た商品です。

 

Dsc_19403_copy_600x918 缶入りにもあるんですよ。『ジョージア 贅沢ミルクコーヒー』。「国産生乳仕立て」と書いてありますが、詳細は不明です。で、ちょっと甘すぎましたねー。大江戸が缶コーヒーブランドで一番支持しているジョージアですけど、これははずしましたねえ。なんかぼわんと雑な味がします。残念であります。

 

 

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2024年12月 2日 (月)

「ドリーム・シナリオ」:奇想で描くニコラス啓示    #ドリームシナリオ #ニコラスケイジ #アリアスター #クリストファーボルグリ

Dreamscenario

映画『ドリーム・シナリオ』は、アリ・アスターの製作だけあって、何とも風変わりで面白いA24作品。ハゲ頭を武器にしたかのようなニコラス<おじさん>ケイジが最高にハマってます。

監督はアリ・アスターではなくノルウェイの新鋭=クリストファー・ボルグリ。前作『シック・オブ・マイセルフ』は観逃がしてしまったのですが、注目すべき個性ですね。確かにA24向き。それにしても、アスターはホアキン・フェニックスの『ボーはおそれている』といい本作といい、なぜか「おじさん」に矢印を向けてますね。ご本人(まだ38歳ですが)の強迫観念なのかしらん?

シュールな物語を通して、メディアやSNSやキャンセルカルチャーのことを描いております。極めて今日的ですね。そこにミドルイヤー・クライシスというか中年男のアイデンティティの崩壊めいたものが示されて、何ともリアル。大胆な奇想をリアルに描いていくことで、映画に活力と密度があるのです。笑いと恐怖の両立でもあります。やっぱり才気となかなかの個性がありますよ、この監督。要注目でしょう。

いや、それにしてもあの「トーキング・ヘッズ」(大きなスーツ)には笑いました。何かの啓示なのでしょうか? あ、ニコラス啓示か。

 

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2024年12月 1日 (日)

「海の沈黙」:とっ散らかって失敗    #海の沈黙 #倉本聰 #本木雅弘 #小泉今日子 #石坂浩二

F6c29fd44cc23793 映画『海の沈黙』は、あの倉本聰89歳の脚本を、『Fukushima 50』(2020年)の若松節郎が監督した作品。本木雅弘、小泉今日子らによる大人の映画。

うーん、でもかなり微妙なというか、どうも失敗ゾーンに足を突っ込んでしまった感じがしております。倉本先生のような老境に至ると理解できるようになるのでしょうか。

贋作の話を通して、芸術の本質に迫ったりしております。そこに昔日の恋だとか、刺青だとか若い女だとかを絡ませているのですが、どうにもみんな唐突だったり中途半端だったりして、なんだかとっ散らかってます。なので、心打たれることもありませんでした。それにこんな話なのに、人が3人も死んでおります。

画家を演じた本木雅弘の浮世離れした個性が、生きてはおります。でも、この役があまりになんだかよくわからない人物造形になっていて…。創作の光景を見ると、おそらく統合失調症だと思われるのですが…。

小泉今日子さんも妙にマダム化していて…。先ごろNHK-BSでやっていた『団地のふたり』の彼女の方が、ずーっと魅力的ですよね、いきいきとして。 そして石坂浩二さんが太い黒ぶちメガネとクシャクシャ頭で画伯を演じるのですが、最初のうち誰だかわかりませんでしたよ。彼の若さや魅力を封印して、ずいぶん化けたものですね。

 

 

 

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2024年11月30日 (土)

湘南ホーム最終戦なのに…    #湘南ベルマーレ #ベルマーレ #湘南対横浜FM #湘南横浜FM #鈴木章斗 #福田翔生

Dsc_1993_copy_1024x628 早いもので、Jリーグも最後の2試合。湘南ベルマーレは、快晴のレモンガススタジアムに横浜Fマリノスを迎えてのホーム最終戦です。最終戦なんで、いつもより良い席を取りました。

Dsc_19923_copy_768x526 4連勝のあと前節の札幌戦で引き分けましたが、このまま6戦無敗フィニッシュで順位を上げていきたいものです。

Dsc_19902_copy_768x503 レモンガススタジアムの売店でもつ煮込み丼とビールを買いましたが、なぜか今日からリサイクル容器を使用。なんとかして今年中に着手したかったんですかね?

Dsc01855 試合前には大漁旗によるピッチ全体のイベントがあったり、湘南・阿部浩之選手のJ300試合出場のお祝いがあったりしました。

Dsc01856 今日の湘南は、故障で戦列を離れていた池田が帰って来て先発。鈴木章斗と根本凌が前線に入り、ルキアンと福田翔生はサブに回りました。

Dsc_1994_copy_1024x610 試合は、ACLエリートとの関係で中2日のマリノスが大幅にメンバーを入れ替えて戦ってる割には、積極的に攻めてゲームを支配します。縦ポンのロングボールを多用して、湘南の両ウイングバックの裏を突いてきます。

Dsc_1995_copy_1024x663 しかし、27分にスクランブル状態から鈴木章斗のゴールでベルマーレが先制! この試合チーム1本目のシュートが得点になるという、たまーにあるパターン。章斗は今シーズン10ゴール目です! そこからは拮抗した戦いになり、前半は1-0のまま終了。

Dsc01859 後半はシーソーゲームになり、湘南は途中出場の福田が見事なループシュートでゴール(GK上福元のアシスト!)。こちらも今期10点目です! 福田はその後にもゴールネットを揺らしたのですが、VARのオフサイド判定で取り消しになってしまいました。写真のようにキム・ミンテに跳びついて大喜びしていたのですけどね。

Dsc01860 2-1とリードしたベルマーレでしたが、最終盤89分と90+4分の失点で逆転負け! ホーム最終戦だったのに、なんてこったい! せめて勝ち点1は確保してもらいたかった試合です。

Dsc01861 というわけで、恒例のホーム最終戦セレモニーは、微妙というかちょっと暗い雰囲気になってしまいましたとさ。

Dsc01862 ゴール裏のサポーターからは、こんな横断幕が・・・「『残留力』をいつまでも美談にしてはならない。現場・フロント・サポーターがさらに成長速度を上げ、上位・タイトルを掴む覚悟を!」

Dsc01863 ユースや育成年代の子らも勢揃いしてのセレモニーでは、まずキャプテンのキム・ミンテが流ちょうな日本語でご挨拶。その後、山口智監督と坂本紘司社長のご挨拶が続き、最後にトップチームの面々は場内を一周。昨日、今期限りでの対談が発表された山田直輝もいましたが、特に出番はありませんでした。

でも今期はまだ1試合残っています。今日の悔しさを晴らすためにも、次節のアウェイ神戸戦は、何としても勝利を!!(湘南はルキアン、章斗、翔生の3人が10得点以上なんですけど、二桁得点が3人いるチームって神戸と湘南だけなんだそうですよ。すげーなー。)

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2024年11月29日 (金)

「黄線地帯 イエローライン」(1960年):上出来な日本版ノワール    #黄線地帯 #イエローライン #石井輝男 #天地茂 #本郷播 

Yellowline シネマヴェーラ渋谷の石井輝男特集で『黄線地帯 イエローライン』(1960年)を観ました。何しろ新東宝だし石井輝男だし、トンデモ映画に期待していたのですが、まったく違いました。いや、いい意味で。意外なほど真っ当な良作だったのです。

脚本が良く出来ていて、日本版ノワールとしてなかなかの成功例となっています。男と女のやり取りだとか、メッセージを書いたお札が人から人へ渡っていくあたりの展開だとか、良いです良いです。そして台詞の良さ。キザでカッコいい名台詞が次々と出て来ます。そんな台詞を口にする天地茂を見ていて、沢田研二『カサブランカ・ダンディ』の歌詞「あんたの時代は良かった 男がピカピカのキザでいられた」を思い出しちゃいましたよ。

このニヒルな殺し屋・天地茂が、クールなのにどこかお茶目な善人っぽさがあって、帽子こそかぶっていないものの泉昌之のマンガの「本郷播」(『かっこいいスキヤキ』とか『食の軍師とかね)』のようでした。

(以降少々ネタバレあり) その善人さが最も発揮されたのはラスト。まるで『汚れた顔の天使』のジェームズ・キャグニーのようでした。しかもアメリカン・ニューシネマの先取りのようでもあり、あの断ち切るような「完」の出し方はちょっと唖然とするほど。言い方を変えれば、ゾクッとするような「名ラスト」です。

娼館で働かされている黒人のムーアさんですが、彼女、どう見ても白人に「塗って」ますよねえ。うーむ。時代を感じるなあ。それにしても彼女の最期をはじめ、この作品の石井輝男はぜんぜんエロ・グロ・ナンセンスには走らないのです。こういう監督でもあったのですね。

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