村上訳「グレート・ギャツビー」
昨年秋に出て随分と評判が良いもので、村上春樹訳のスコット・フィッツジェラルド「グレート・ギャツビー」を読みました。美麗ハードカバーと新書サイズの普及版が出てて、小生は当然普及版。「ギャツビー」は学生時代から文庫版の邦訳も、ペーパーバックの原書も読んでみたけど、「そんなにいいかあ?」ってな印象だったので、村上訳に期待するところは大だったのです。うん、確かに面白い。序盤は割と説明に終始して普通の出来かと思いましたが、話が軌道に乗ってくるとすらすらと流麗に「なるほどこういう話だったんだ」と感じさせながら面白さで引っ張ってくれます。純粋なロマンティシズムと少年性、そして喪失感--まさに村上春樹の小説にも通じるというか大きな影響を与えた特質がとてもよく理解できます。
村上氏があとがきに書いてましたが、「この原文がまた一筋縄ではいかない。(中略)・・・融通無碍な美しい文体についていくのは、正直言ってかなりの読み手でないとむずかしいだろう。ただある程度英語ができればわかる、というランクのものではない。」そうなので、小生の理解が及ばなかったのもむべなるかな、なのであります。なので、現代に向けてお色直しをしたこういう新訳が出るのは、意義深いことだと思います。 「キャッチャー・イン・ザ・ライ」もそうだったけど、こういう古典の新訳は村上氏の今後の仕事のある程度の比重を占めることになりそうです(とあとがきにもありました)。 となると次は村上訳「ロング・グッドバイ」(R.チャンドラー)を読みたいですよね。
| 固定リンク
コメント