原研哉の「白」
原研哉の新著「白」(中央公論新社)を読みました。名著「デザインのデザイン」(サントリー学芸賞受賞)同様、真っ白なカバーに必要最小限の文字。中のレイアウトもほとんど同じですが、今回は巻末に英文翻訳がまるまる載っていて、縦組み横組みを利用した「両開き」の作りになっていて、その間に参考図版の写真が位置しています。それで1冊におさまるくらいなので、本文は約80ページと極めて短いです(すぐに読めてしまうので、すぐさま2度目を速読したぐらいです)。
しかしそこに展開される論考の深さ、的確な事例の選択、日本文化の中の「白」を縦横に論じる筆者の博覧ぶりと端正な文章には、「この人、デザイナーというより学者か評論家みたいだなあ」と思ってしまいます。
冒頭部分で著者自信が言及している谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」への返歌--それがまさにこの本のポジションでしょう。翳=黒の対称点としての「白」を、日本文化の本質として解き明かしていくその手つきは、科学者のそれのようでもあります。
長谷川等伯の屏風に関する章で、著者の「一双」と「一隻」の勘違い(誤植?)が何ヶ所かあったように思うのですが・・・。
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