撮影がいい「しあわせのかおり」
映画「しあわせのかおり」、本当に出てくる中華料理がどれもこれもおいしそうで、まずそのことが素晴らしい。奇を衒ったところのない定番のいい話なのですけど、藤竜也の渋い味と中谷美紀の女優らしい「華」と、三原光尋監督の抑制の効いた丁寧な演出で(初期の作風とは違って、随分大人っぽくなりました)、愛すべき佳作となりました。 でも最大の功績はキャメラの芹澤明子(最近の黒澤清作品を手がけている人のようです)! 前述した料理のシズル感たっぷりの表現(あのトマト卵炒めのおいしそうなこと!)、料理を作る作業を追うキャメラも(特に中華鍋と油の表現など)素晴らしく、室内の光と影(シャドーになる人物)とかも効果を上げています。上海ロケも美しく、空気感が描けています。でも、あのラストの二人を小さく窮屈に捉えたフレーミングと影の多さが作り出す雰囲気、そこにロングショットで無言の乾杯が行われる幕切れにはしびれました。 それにしても観た後で中華料理が食べたくてたまらなくなること必至です。アン・リー監督の「恋人たちの食卓」(原題:飲食男女 Eat Drink Man Woman)に迫る中華料理映画と言えるでしょう。
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