今の日本がある「トウキョウソナタ」
映画「トウキョウソナタ」は今の日本そのものを描いた、凄い傑作です。 黒沢清が方向をちょっと変えて、ホームドラマをやっているのですが、そこは黒沢ですから色々と罠が仕掛けてあります。リアルとアンリアルを同居させて、おかしさと怖さと奇妙さの中に、現代日本の抱える問題の数々を描き出します。いや、現代日本がまるまるこの映画にある、とさえ言えるでしょう。その問題提起を、黒沢(清)映画というクセのあるフィルターを通して行うことで、そして4人家族それぞれのエピソードの織り成すハーモニーとして(アルトマンの群像キャラクター映画のように)多面的に作品世界を作り上げることで、とてもユニークで充実した傑作になりました。 (以下多少ネタバレ)そして最後にドビュッシー「月の光」が家族の再生を示唆して、全てを浄化していく・・・けど何も解決していない不安も残る、というあたりも、この作品にふさわしいラストだと思います。甘いと言うよりは、むしろ黒沢が新しいステージに入ったことを示すのだと・・・。
関係ないけどあの線路際の白い家は、井の頭線の上りで神泉駅のちょっと手前の、進行方向左側に見えますね。
それにしても今年は「歩いても 歩いても」、「ぐるりのこと」、そしてこの作品と、ホームドラマの良作が目立ちますね。「純喫茶磯辺」なんかもあるし、「母べえ」もそう言えるかも知れません。
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