237分のオデッセイ「愛のむきだし」
日本映画界の異端児・園子温監督は、あの傑作「紀子の食卓」も2時間38分の大長編だったのですが(そしてその長さが実に生きていたのですが)、本作はなんと3時間57分! 「風と共に去りぬ」や「アラビアのロレンス」よりも長いってことに、まず驚きます。昔懐かしい「休憩」(10分間)入りです(実際、トイレ休憩として助かりました)。
実際この長さゆえに、主人公たちと一緒の時間を生きた、ある種のオデッセイ的体験を感じることができます。しかしながら、その描写や編集は決して大長編のものではなく、チャキチャキとスピーディー。特に前半はあまりの展開に「えーーっ!?」と面白がってるうちに、1時間50分余りが経っていました。この異常なまでの面白さは近来まれに見るほど。登場人物一人ひとりの視点から見たチャプターごとの展開も楽しく(これ「紀子の食卓」にもありましたよね)、そもそも「愛のむきだし」というメインタイトルが出るのが、映画が始まってから小一時間経ってからというのがスゴイです!あと盗撮のカメラアクションや、その訓練も凄くて笑えます。でもカッコイイっす。
それにしてもキリスト教、罪、盗撮、性欲、新興宗教、家族、女囚さそりetc.を同じ土俵で描きながら、最後には堂々と“純愛”に帰結させるその強引なまでの手腕。 役者たちも、それぞれの素材なり演技なりで健闘していますが、欲を言えば「紀子の食卓」での『つぐみ』が欲しかったです。安藤サクラが役柄的にはそうなるのですが、そして彼女は確かに悪魔的だし、はれぼったいまぶたがこわかったりしますけど、あのつぐみのハンニバル・レクター的な「静かな狂気」にはかないませんでした。
今の時代の日本を描いた「紀子の食卓」と較べると、こちらはその要素も消化しながら、もっと愚直に純愛を描き通しております。しかし、後半多少の失速があるのと、ラストがやや拍子抜けの感があったことは否めません。でも劇中に何度も流れるラベルの「ボレロ」のメロディーのように、いつまでも続いて欲しい・・・と思わせる映画でもありました。
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コメント
こんばんは!
はじめまして!
私もとても気に入りました。
いつまでも続いてほしい・・・
正に同感です。
投稿: 咲太郎 | 2009年2月 5日 (木) 00時58分