「ナイン・ストーリーズ」の新訳
J・D・サリンジャーの「ナイン・ストーリーズ」がヴィレッジブックス社から新訳で刊行されたので、読みました。村上春樹の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」新訳に次ぐ快挙ですが、今回の訳者は柴田元幸さん。村上/柴田の対談で「サリンジャー戦記」なる文春新書も数年前に出たぐらいですから、まさに適任なのです。 が、しかし、まさかの読みにくさ。久々でディテールを忘れているとはいえ、話を知っている小生が読んでこんなにわかりにくいってのは・・・。 まあ、この短編集はいかにも雑誌「NewYorker」っぽいスタイルなので、機知やアイロニーに富んだ表現をさりげなく、暗示するように微妙に表現していまして、むしろその微妙な空気やニュアンスを何よりも大切にするところがありまして、確かにストレートな理解が難しいと言えるかも知れません。それにしても、ちょっと翻訳がギクシャクしてうまくいってない話が多いように思えました。 「ディンギーで」とか「エズメに」とかをはじめ、野崎孝訳の方がいいと思うなあ。でも最後の「テディ」に関しては、今回の訳の方が良かったように感じました。
みんな「このインチキな世界の中での繊細すぎる魂の物語」であり、イノセンスがそこかしこで輝きを放っています。まあ、今読むと「そこまで繊細で、いったいどうすんのよ?」とも思いますが・・・。 サリンジャー、1919年1月1日生まれ、今生きていれば90歳なのですが、ほんとのところどうなんでしょう?(彼の人嫌いは有名で、1965年以降一切の小説を発表せず、ニューハンプシャー州の片田舎で世間の目を避けて隠遁生活を送っているのです)
*ようやくパソコンが復活し、写真が載せられます!
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