トゥー・マッチな「ゼロの焦点」
映画「ゼロの焦点」、まあ良くも悪くも往年の日本映画の雰囲気を湛えております。昭和32年の日本が、CGを使った風景や街並、衣装、美術などにわたって時代再現されていますけど、割と大味な印象。予算の関係もあるのでしょうし、頑張ってはいるのですが、細部に神が宿り損ねています。
女優達の演技合戦の趣きですが、今回はもう中谷美紀の圧勝。出てきただけで“大女優オーラ”に包まれています。終盤(特に回想場面)、何度もその芝居の質だけで泣きそうになりました。とにかく今の中谷さんは『無敵』って感じです。やはり「嫌われ松子の一生」が大きかったし、その自信がTV「白洲次郎」を経て確たるものになったように思えます。 なのに、普通に芝居見せておけば演技賞取れるような質なのに、犬童一心の演出がトゥー・マッチ(やりすぎ)で、ほとんどホラーなので、バランスがガタガタです。怖い顔させて稲光が当たるとか、ヘタすると何かのパロディーか?ってほどに、一線を越えちゃってますもん。 犬童監督は前作「グーグーだって猫である」においても吉祥寺における追跡シーンで、ビートルズ映画のパロディーのようにトゥー・マッチな演出で、バランス崩してましたからねえ。今回も妙に日本的な怨念のようなものが感じられて、あたかも横溝正史の金田一シリーズみたいでした。 それにしても鹿賀丈史の終盤の行動がわからんです(原作読んでるとわかるのでしょうが・・・)。そこらも大いに不満。不満ついでに、“Only You”のミスマッチな使い方にもずっこけました。
エンディングの中島みゆき「愛だけを残せ」もまた、この上なくトゥー・マッチな歌唱でありました。うーむ。 まあ全体的には、そこそこ楽しめる作品でもあるのですけれどね。
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