「抱擁のかけら」;見事な語り口
映画『抱擁のかけら』は、ペドロ・アルモドバルの成熟を示す見事な作品でした。時間、男、女、愛、憎しみ、映画・・・それらを織り交ぜながら、いくつもの謎を徐々に解いていくその手際の鮮やかさ。語り口で見せる映画。ほんとに『トーク・トゥ・ハー』以降のアルモドバルは巧いです。昔のような破たんもなくなって、今や世界で5本の指に入る監督ではないかしらん。 そして、アルモドバルならではの幸福なカラーリング。あのカラフルでビューティフルな映像を観続けることの眼福。
ペネロペ・クルスの堂々たる美女っぷりはやはり本作の“華”です。ポスター・ヴィジュアルにもなっているオードリー・ヘップバーン調からプラチナ・ブロンドのウィッグまで、実に絵になっていました。
本作の作りにおいてもあえて「通俗」の強度を選んでいるアルモドバルだったりしますが、そこに「かなわぬけれど、それでもなお甘美な愛」が忍び込ませてあって、それが観る者の心にちょっとしたスクラッチを残すような気がしてなりません。
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