「17歳の肖像」の上質な面白さ
映画『17歳の肖像』は1961年のロンドン郊外が舞台。ほぼ半世紀前であり、ザ・ビートルズのメジャー・デビューは翌年。されどある意味時代劇のような不思議な世界です。だって、16-7歳の女子高生が、お店とか校内とかでフツーに喫煙してるんですよ。当時のことだから、0.1mgとかの軽いタバコは無かったでしょうに。そもそも17歳とつきあってるピーター・サースガードも今なら逮捕されちゃってもおかしくないですよ。 まあ時代というのはどんどん変化していくものです。一方で、その中での人間の営みとか本質とかはあまり変わらないもの(それこそ何百年も・・・)ってあたりも示されているように思えます。 それにしてもこの時代考証や衣装、ヘアメイクなどの再現もお見事。雰囲気出てます。
キャリー・マリガンという原石を掘り当てた意味も大きい本作。今年25歳になる彼女(撮影当時22歳)が、その童顔で女子高生役を何の違和感も無く演じます。彼女のあこがれや無知や背伸びや変容を見せることが、この映画のキモとなっています。 彼女の良心や学校の先生、もちろんサースガードやその友人も含め役者たちが皆素晴らしく、中でもメガネでスリムの女の先生を演じるオリヴィア・ウィリアムズが出色の出来です。こういう人(キャラクター)、けっこう好き。 そして役者のいい芝居を引き出しつつ、破綻なくテンポよくこの物語を描き切る女性監督ロネ・シェルフィグの手腕が見事です。最近の映画からとんと失われた、娯楽性と芸術性を両立させながら上質なフィクションをしっかりと語る演出術が、ここにはあります。
本作の現代は“An Education”。その「教育」という言葉が学校の教育でもあり、経験=人生勉強という意味でもあるという重層的な作りが本作に深みを加えていることは、言うまでもありません。 それにしてもラストの主人公(マリガン)のナレーションを「けなげ」と聞くか、「女ってタフ」と聞くか、ここらも重層的な含みを持たせてあって、さすがなのであります。
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