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2010年9月 5日 (日)

「借りぐらしのアリエッティ」:小さな話の味わい

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『借りぐらしのアリエッティ』は、短編小説のような、94分の佳品でした。ジブリらしい絵とジブリらしい物語で、新人の米林宏昌監督が手堅くまとめました。 とにかく庭や小さな世界を描いた「絵」が気持ち良く、人間の世界のスケールと小さな世界のスケールの対比に、見事な職人的技巧を感じます。ティーポットの口から注がれるお茶が、ああいうスケールの“1滴”になっている描写! 

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洗濯バサミよりも小さいクリップがアリエッティの髪留めになっていたり、待ち針が剣のように腰に差されていたりするあたりも、実にいいです。

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(以下ネタバレあり) ラスト近くのアリエッティと少年の場面はなかなかの名シーン。なんだかじわっと胸に迫ります。大げさにではなく、抑制を効かせながら(ああ、あのクリップを髪から外して差し出すあたり・・・!)。 ただ、その時の少年の台詞で、「アリエッティ、君は僕の心臓の一部だ。」ってのが、どうもしっくり来ません。確かに心臓を患っている少年ではあるのですが、これが英語原作だと(おそらく)“You are a part of my heart.”とか言うんでしょう、たぶん。そうすれば“heart”が「心臓」と「心」の両義性を持って、無理なく素敵な台詞として成立するのですが、そこが翻訳ものの難しいところですねえ。

ラストなども実にあっさりした感じですが、小さな世界を描いた「小さな話」の味わいは、決して悪くなかったです。

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