「スープ・オペラ」の滋味
映画『スープ・オペラ』は思ったよりもいい出来でした。このタイトルは「安っぽいお昼のメロドラマ」を意味する「ソープ・オペラ」からなのでしょうが、いやいやどうして、キチンと鳥ガラのだしを取ったスープのように滋味深い出来となっております。
瀧本智行監督が『犯人に告ぐ』とはうって変ったタッチで、淡々と、そしてじんわりハートフルに描く“癒し系”ドラマです。そこはかとないおかしみが良いです。 食がからむ癒し系ということで言えば、今年の『食堂かたつむり』や『トイレット』よりも上でしょう。
舞台となる昭和な住宅もいいんだけど、役者がみんないいですよねえ。坂井真紀なんて、今年じゃなかったら主演女優賞の候補に推したいぐらいです(今年は深津絵里、田畑智子、満島ひかり、松たか子・・・といっぱいいますんで)。さっぱりしたナチュラルな感じがとても良いです。裕木奈江が今日本で役者やってたら、丁度こういう役が似合ったことでしょう。そういえば、裕木さんと坂井さんは『ポケベルが鳴らなくて』で、親友役をやっておりましたっけ。 久しぶりの藤竜也さんも、渋カッコイイ味を発揮してますし、西島隆弘くんのニコニコ顔もいいですもんねえ。
いい味わいにちょっと水をさしたのが、場面の変わり目に挿入される野原で演奏する楽団(と言っても1~3人ですけど)のシーン。なんか折角の流れを断ち切るし、「しゃれてるでしょ」的な演出で何度も繰り返されるので、結構うっとうしかったです。 その楽団も登場する終盤の幻想シーンは、あっさり味のフェリーニを意識したみたいですが、これまたあんまり成功しているとは思えませんでした。そこらがちょっと残念ですねえ。 でも「ハムカツは薄い方がおいしい」ってのには、小生も我が意を得たりと膝を打ちました。
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コメント
なんかいいですねw。
新ピカでは秋のホッコリ映画キャンペーンと称して『トイレット』『スープ・オペラ』『マザーウォーター』とやってたけど『トイレット』は荻上監督のネームバリュー、『マザーウォーター』は出演陣で客が入ると思うので間に挟まれた『スープ・オペラ』は可哀想な感じがw。
でも『スープ・オペラ』のほうがホンワカするのですよね。出演者もキチッと演技できる人ばかりだし。塩見三省さんや平泉成さんは「さすが役者!」でしたね。
投稿: ブリ | 2010年11月 8日 (月) 15時33分