「玄牝-げんぴん-」:感銘とほろ苦さ
河瀬直美監督によるドキュメンタリー映画『玄牝-げんぴん-』は、なかなかに興味深い作品でした。 自然分娩のために妊婦たちが共同生活を行う吉村医院。よく聞く「昔の農家のお母さんは、出産の日の数時間前まで元気に畑で働いていた」みたいな生活を実践し、薪割りや耕作に精を出す妊婦たち。 そして出産。 立ち会った小さな男の子が、新しい生命の誕生とお母さんの偉業に感動して涙を流す場面などは、観る者にも感銘を与えます。
良くも悪くもこの吉村先生のキャラクターが本作のキモ。「出産に命の危険はつきもの、そこで生きるも死ぬも神様が決める自然なこと」とする彼の哲学には賛否両論あることと思いますが、少なくとも本作に出てくる妊婦さんたちは心酔しているようです。 でも終盤に、そんな吉村先生だって聖人でも救世主でもなく、実の娘から「他人には尽くすのに、私たち家族には耳を傾けてくれなかった」「もう会わない」と厳しい言葉を投げかけられる場面を入れるあたりが、映画作家としての河瀬直美の優れた点でしょう。苦い口当たりが残りますけどね。
それにしても、若い女性が観たら「子供を産みたくなる映画」だなあって思いました。違うかしらん?
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