芥川賞2作品を読んで
「文藝春秋」恒例の芥川賞発表号を読了。今刊行中の受賞作2作、単行本で買えば1200円×2を860円で読めてしまうのですから、お買い得ですもんね。
話題性もW受賞も綿矢/金原の7年前以来ってことで、めでたく増刷になったようです。それにしてもデザインワークとか記事のセンスとかが、まるまる4-50年前のままって感じで、スゴイ雑誌ではありますね。
美女と野獣の受賞と相成ったわけですが、朝吹真理子の『きことわ』はやはり品が良く毛並みが良い感じがありありと・・・。美しい日本語で、時を越えて情緒がたゆたう小説世界の繊細な味わいが、極めて甘美です。プルーストを持ち出したくなるほど、“文学”という言葉が似合います。
対する野獣・西村賢太の『苦役列車』は、対称的に底辺の低レベルの主人公がもがきあがく(むしろそれすらもしない)さまを自伝的=自虐的に描いた私小説。リアルな日雇い生活の描写と、呪詛に満ちた鬱屈の日々が、読む者を惹きつけます。「しょーがねーなー」だけど、「面白い!」です。
綿矢りさ/金原ひとみの二人は大江戸もそれぞれ好きで、作品をフォローしております。今回の二人も綿矢/金原の如く真逆の作風を持つだけに、今後の活躍を見届けていきたい気持ちになりました。
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