「ダンシング・チャップリン」:小生の好みはメイキング部分
映画『ダンシング・チャップリン』は、周防正行監督がバレリーナ草刈民代の姿を何としても映像に残したかったんだろうなあと感じさせる一篇。第一幕「アプローチ」と第二幕「バレエ」の2部構成(5分の幕間入り)です。
第一部「アプローチ」は、この作品を形にしていく過程の“メイキング”映像。ここが断然面白いのです。 練習し、練習し、障害が起こり、何とかそれを乗り越え・・・、やはり舞台を作り上げる過程を描く「バックステージもの」ってのは、常に魅力的なものだと思います。大御所プティにやりこめられる周防監督の弱っちい姿なんか、実に面白いじゃありませんか。
第二部「バレエ」は、あくまでも映画用の再現であり、実際にはほとんどを砧の東宝のスタジオで撮影しています。ここに残された草刈のバレエの美しさ、そしてチャップリンを演じるルイジ・ボニーノの高い完成度を堪能できます。黒バックの中で、ダンスの動きに集中できます。映画だからと言って、へんに映像的な小細工をしないあたり、ちゃんとわかっています(民代さんから、きつーく言われていたのかも知れませんが)。 ダンスなどのパフォーミング・アートの場合、頭の先からつま先までの動きとフォルムが全部見えることが何より重要なので、フルショットでせいぜいパフォーマーに合わせたカメラの横移動ぐらいがベストなのです。フレッド・アステアのダンスをカット割りするのは、愚かなことなのです。
ただ、プティの反対を押し切ってまで公園で撮影した警官たちのダンス・シーンは、それほど成功しているとも思えませんでした。確かに闇の世界が続く中で、屋外の光と緑の解放感はあるのですけど、それだけで・・・。これではあえて外へ出すまでもなかったような気がします。むしろ間の抜けたような違和感がありました。例えばスタジオで撮っても、ここだけは背景を変えるとか、ライティングを変えるとかで対応するべきだったように感じました。 同様にラストの屋外シーンも、何やら違和感としまらなさが残ったのでありました。
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