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2011年5月11日 (水)

「わたしを離さないで」:わびさびと哲学

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映画『わたしを離さないで』は、オドロキのSFなのでした。スティル写真や予告編映像からは、1960-70年代頃の英国の話なんだろう的な匂いが漂っていますが、それは一面では正しくもあり、実は正しくもありません。古典的なルックと語り口の一方で、大胆な世界を設定したSFなのだとは、しばらく前に何かの記事で知った時にはかなり驚きました。

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カズオ・イシグロの原作を、マーク・ロマネク監督(あのロビン・ウィリアムズの怪作『ストーカー』の監督ですと)が実に端正に映像化しています。寂寞としながらも、懐かしく美しい映像です。ことに風景のロング・ショットの美しさたるや! 物語の語り口は抑制が効いていて、一級の映画表現となっています。 監督曰く「もののあわれ・わび・さび・幽玄」を意識したそうで、この発言を知った時にはなるほどと得心しました。

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←このボードウォークの場面なんか、空や光の具合とかが遠近法的構図の中で、心揺さぶられる美しさでした。 それでこそ、この救いのない物語に、人生の美しさ、はかなさ、そして限りある命の尊さと輝きが浮かび上がるのです。337671_010

キャリー・マリガンいいなあ、好きだなあ。この「ふにゃっ」とした顔がいいんです。今回はそこに何とも知れぬ哀感が加わって、また見事。 彼女の子役(他の子役もだけど)がまた彼女にそっくり!成長に伴って役者が変わった時のスライドが実に自然。外国映画って、そこらへんかなりキチンと、違和感なくやってくれますよね。なんで日本映画だと、「それって顔のタイプがぜんぜん違うでしょ」って子がキャスティングされることがかなり多いですよね。どういうわけなんでしょうか?

ラストの切なさと無常感は、非常に哲学的なものです。やはりSFの『ブレード・ランナー』や『A.I.』がそうであったように・・・。 誰もが、人間の「生」の本質について思いをはせないわけにはいかなくなる、そんなエンディングでした。

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» わたしを離さないで [LOVE Cinemas 調布]
ブッカー賞受賞作家カズオ・イシグロの小説をベースに、過酷な宿命を背負った少年少女たちが、それを受け入れながら限られた命を精一杯行きぬく姿を描いた青春ドラマだ。主演は『17歳の肖像』のキャリー・マリガン、共演に『つぐない』のキーラ・ナイトレイ、『ソーシャル・ネットワーク』のアンドリュー・ガーフィールドと若手実力派3人が揃う。監督はマーク・ロマネク。... [続きを読む]

受信: 2011年5月12日 (木) 00時17分

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 【ネタバレ注意】  『わたしを離さないで』の中には、実に無意味な問いが出てくる。  それは、「彼らは心を持っているか」という問いかけだ。  もちろん、本作はこの設問を追及するものではない。追...... [続きを読む]

受信: 2011年5月19日 (木) 08時11分

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