「127時間」:ポジティヴな生き地獄
映画『127時間』、やはり思った通りの結末を持つ実話だったのですが、とにかく類例のないスゴさです。見事に映画です。94分をパワフルに駆け抜けます。
開巻からのブルー・ジョン・キャニオンにおける広々とした眺めの解放感。マウンテンバイクの軽やかな疾走感。谷間の泉の美しいブルーと極楽気分。女の子たちとの楽しい時間。この映画の中で、その後にはできなくなっちゃうことをやりまくっておいて、後からそれが効いてくるというダニー・ボイル監督の戦略です。また、それらの描写がハンパなく上質。いい絵が撮れてるのです。
はさまっちゃった途端に“127 Hours”とタイトルが出るあたり洒落てますが、さあそれからが大変。いや、大変で済むようなもんじゃありません。映画で観てるだけでも辛くなってくるのですから、現実は・・・。だって、岩に挟まれてるだけで手も痛いはずだし、薄着なのに夜は寒いし、ずーっと不自由に立ったままだし、腹は減るし喉は乾くし・・・。ああ、恐ろしい。まさに生き地獄的シチュエーションってことで言えば、『オープン・ウォーター』や『フローズン』と並ぶものでしょう(おお、その3作とも渋谷シネクイント上映作品だ。小生の場合、本作は日比谷シャンテシネで観ましたが)。
後半、主人公が衰弱して意識も朦朧としてくると、ダニー・ボイルお得意の幻想的シーンが挿入されていき、現実と非現実の境界が曖昧になっていきます。回想も、あたかも「走馬灯のように」(常套句だけど)織り込まれていきます。ここらが、場面転換の不可能な題材におけるダニー・ボイルの腕の見せ所で、冒頭、終幕ともども、ちゃん「効いて」ます。映画を閉塞的一本調子から救っています。 『スラムドッグ$ミリオネア』なんかより、こちらの方が断然上です。
(以下少々ネタバレあり) それにしても想像通りのクライマックスが、痛すぎるーー!! 極限越えー! 周囲の女の人たちが、結構ざわめいたり、目を手で押さえたりしていました。←あれって、不思議ですよね。小生だったら手なんか使わずに、単に目を閉じるけれど・・・。 音響効果も含めて、映画史上に残るクライマックスとなりました。 でも映画的にはその後ラストまでのモロモロの描写がしっかりしていることで、作品価値がより高まったと思います。 ジェームズ・フランコも好演!全編のほとんどを一人で、よく頑張りました。映画に、希望や明るさとでも呼べるようなポジティヴなパワーが宿っているのも、多分に彼のおかげでしょう。
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