「大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇」:瓦礫の中のゴールデン・リング
映画『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』は、かなり不思議な作品でした。今注目されてる劇作家の前田司郎が原作・脚本だそうで、本田隆一監督の演出も含めて、かなり特殊なトーンとなっています。
まあ、演劇人といっても宮藤官九郎とも松尾スズキとも、もちろん三谷幸喜とも違います。ケラリーノ・サンドロヴィッチには比較的近いかもしれません。脱力系のオフビートさ+シュールな笑い。全編を通じてかなり笑えました(赤いでんでんとか、ビーフシチューの温泉とか、「地獄甘エビ」とか、五反田とか・・・)。
演出のうすら寒い感覚とか殺伐さは、まあ地獄ということで「あえて」そうなってるのでしょうけど、それにしてもちょっと間(ま)が長過ぎますよねえ。あと10分はつままないと。
水川あさみは声がひどいので小生の評価は低かったのですが、ここでは結構いい感じです。 他にも樹木希林・柄本明の『悪人』コンビは出てるし、片桐はいりや荒川良々も「らしい」怪演を見せてす。
でも本作で印象に残ったのは橋本愛ちゃん。昨年『告白』でデビューした時、小生が「この子は伸びる」と書いたとおり順調にキャリアを積み重ねています。この春には主演作『アバター』(キャメロンのじゃないよ)も公開されましたし。それこそアバターのように青い色に塗られちゃってますけど(「青い人」と呼ばれる青鬼の設定)、それでも可憐にかわいいあたりが流石です。彼女がらみの終盤のシーンなんか、妙な哀感があって、ヘンな感動がわき上がります。こんな映画なのに。そこらへんが本作の見どころであって、ものすごく難しく新しいことに挑戦していると言えましょう。とことんバカやりながら、とても美しいピュアなものを浮かび上がらせています。 佐野元春『Rock&Roll Night』の歌詞で言うなら「瓦礫の中のゴールデン・リング」があるのです。
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