「世界侵略:ロサンゼルス決戦」:男騒ぎの戦争映画
映画『世界侵略:ロサンゼルス決戦』は、突然宇宙人が地球を襲撃するSFものでありながら、実質的にはど真ん中の「戦争映画」です。
戦闘描写のハードな迫力が、小気味良くも観る者を揺さぶるカット割りが、迫真の力で迫ります。残酷描写のない『プライベート・ライアン』といった感じで、自分が戦場に放り込まれたような錯覚を起こしそうなほど、緊張感に溢れています。ホント撃たれそうです。
で、とにかく「男騒ぎ」の映画なのです。軍人さんの英雄譚なのです。普通、今はこういうの作れません。「今は」どころか、ベトナム戦争以降、中東戦争から何から、もっと自己批判的だったり、神経症的だったりの戦争映画ばかりで、こういう『コンバット』的なものはずっと無かったのです。あったとしても、『スターシップ・トゥルーパーズ』とか『インデペンデンス・デイ』とか、宇宙人をインディアン(先住民)に見立てた「現代の西部劇」ばかりで、「現代の戦争もの」をこのような熱血危機突破もの(要は『コンバット』ですね)として作ったケースは皆無だったと思います。
とても上出来で、面白いのです。例えば『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』あたりと較べても、映画としての質はけっこう高いのです。であるだけに、「いいのかな」の思いが頭をもたげてきます。こういう好戦的、外的撲滅キャンペーン的な映画を、手放しで面白がっていていいのかな・・・と。 単純なアメリカの若者がこの映画を見て、「Cool! 俺も軍隊に入って、アメリカの敵を全部ぶっ殺してやる」とか考えないだろうかと心配になってきます。
とはいえ、映画自体の評価はキチンとしてあげたいと思います。シンプルこの上ないストーリー、いやシチュエーションをパワフルに駆け抜ける演出力が見事です。上質なエンタテインメントに仕上がりました。 主人公役のアーロン・エッカートも素晴らしいです。演技派の曲者役者が演じるタフガイ・アクション・ヒーローも、いいものですね。彼が演じたので、子供や部下との感動的なシーンも説得力を持って生きました。
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