「うさぎドロップ」:愛菜ちゃん無敵!
映画『うさぎドロップ』は、SABU監督がこの題材?という疑問を吹っ飛ばすウェルメイドな快作。終始にんまりと楽しめます。
それはもう1にも2にも芦田愛菜ちゃんのおかげでして、もう彼女が映っているだけで画面が映画的な輝きを放って観る者を惹きつけるのです。冒頭の黒い服と虚ろな表情、これだけでこの子の性格や深い悲しみや困惑や絶望感や何やらかんやらを表現しきっている凄さ。 その後も彼女の存在が、どんなに本作を豊かにふくらませていることか。ほとんど主演女優賞ものではないでしょうか。 おにぎりを作ってくれるところ、おゆうぎのダンス、ダイキチを踏んづけて走っていく姿・・・どれをとっても、かわいすぎます!
松山ケンイチをはじめ、桐谷美玲、綾野剛(怪しい個性が生きた)、池脇千鶴、中村梅若、風吹ジュン、高畑淳子と、役者たちがみんないい。 SABU監督の演出も久々に好調。あのサイテーだった『蟹工船』に悪いものをみんな吸い取らせちゃったかのごとく、本作では復調しています。そしてハート・ウォーミングな新境地を開拓しています。
でもやっぱりSABUなので、画面が疾走します。松山ケンイチが疾走します。愛菜ちゃんをだっこやおんぶしながら、走りまくります。 その走りを見事に捉えながら、一方では白い光にあふれた優しく輝く映像をものにしたのは柳田裕男撮影監督。『ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う』を撮った人だったのですね(あの作品の終盤も白い光が印象的でした)。
子育てと仕事と社会とか、タイムリーな社会性も取り入れながら、堂々たるエンタテインメントに仕上げた原作&脚本も上出来。 ちょっとダンス夢想シーンのおふざけが浮き気味かなあと思いつつも、最初から最後までSABUの「やさしさ」を楽しませていただきました。
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