中谷美紀の舞台「猟銃」
中谷美紀の初舞台『猟銃』(井上靖原作、フランソワ・ジラール演出)を渋谷のPARCO劇場で観ました。最前列右サイドの端から2席目というかぶりつき。日本代表だったら内田が深くえぐってクロスを上げるあたりの席です。近い時には中谷さんが4-5m先に迫ります。
中谷さんはなんと3人の女を連続して演じ分けます。1時間35-40分ほどの芝居ですが、ほぼ3等分の時間でそれぞれの女たちを演じ、しかも書簡体の台詞をしゃべりっぱなし。小説1冊まるまる頭に入っちゃってるわけですね。初舞台なのに、なんというハードルの高さでしょう。なんでも演出家からは「3人のうち誰を演じたい?」と訊かれ、「3人とも演じたい」と答えたのだとか。うーん、「全身女優」ですね。
ほとんど闇に囲まれたシンプルなシンプルな舞台には、彼女と薄幕のスクリーンの後景としてゆっくり動く男性(台詞はナシ)しか登場しません。 真の闇から始まる舞台には、まず雨が降り注ぎ、ステージ中央に水たまりが出現します。 そこに現れるのは地味な服装のメガネっ娘。ゆっくりした動きで、猛烈な速さの台詞をしゃべり続けます。やっぱり中谷さんはお顔もお声も美しいですね。裸足でずっと水の中、冷えが心配です。
中谷さんが後ろを向き、着ていた服を脱ぎ捨てると(ドキッとしますね)、真っ赤な肩出しドレスの2人目の女が現れます。弱々しかった1人目とは全く変わった、アグレッシヴな女性です。同時に足元もあれ不思議、いつの間にか水が引いて石が敷き詰められております。この女性の情熱を示すかのような赤ドレスで、膝まづいたり寝転がったりします。これまた寒そうです(いや、場内が結構涼しかったもんで)。
そしてまた脱ぐと、今度は白いスリップ姿。そこで舞台は敷き板がバタン、バタンと裏返って、板の間に。そこへ天井から吊り下がった盆で、着物一式が下りてくるという仕掛け。ここで照明が暗めになるとスリップも脱いで(ボディスーツか何かを着てるようでしたが)、真っ白い着物へのナマ着替え。台詞をしゃべりながら、延々と時間をかけて・・・うーん、和服ってやっぱり大変ですね。彼女の着物に柄が投射されていましたが、最後には白装束となり死へと向かう・・・。
とにかく静謐でシリアスな舞台です。中谷さんの演技力というか、むしろ「存在」に全てがかかっています。さすがに台詞を「噛む」ことも多かったですが、これだけの言葉の洪水に中ではしょうがないことだと思えました。 この舞台を経て、女優として更に格を上げることは間違いありません。 カーテンコールでは、白い着物のまま三つ指ついておじぎなさったのでありました。
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コメント
”なさった”
笑 笑 笑
投稿: ぷっ | 2012年3月25日 (日) 01時28分