「一命」:海老蔵がクール&ホット!
映画『一命』、三池作品にしてこれだけ堂々たる品格オーラが出ているものって初めてですよね。なにしろあの『十三人の刺客』にしても、岸部一徳や伊勢谷友介の件りで敢えて破調に崩していく人だっただけに、ここまでの王道的作品をものにするとは意外なほどでした。
林田裕至による美術が、なんか異様な不穏さを放ちつつも堂々の美を見せつけます。北信康の撮影も、基本的には人物の顔や立ち居振る舞いを追いながら、日本家屋や紅葉など自然の美しさをきっちりと見せていきます。でも、いやだからこそ3Dは余計でした。「時代劇初の3D」ってことで、これは一応体験しておかねば・・・と観たのですが、一番3D効果があったのはタイトル文字という『エアベンダー』パターン。家屋や庭の奥行きが出るということもほとんどなく、むしろ画面が暗くなって美しい映像を味わう邪魔になる位のものでした。ここに関しては、三池監督も計算違いだったのではないかなあと思いました。まあ、雪だけはそこそこ効果が出ましたけど。
瑛太の痛そうな熱演も、満島ひかりの薄幸そうな陰りも、青木崇高のサディスティックなヒール演技も、役所広司の抑制の利いた芝居も良いのですが、これほどまでに「何もしない」竹中直人ってのも、竹中史上初めてのことではないでしょうか。ハッキリ言って、これなら竹中直人じゃなくても、誰でもいいような・・・。
市川海老蔵の口跡や所作はやはり見事です。静の芝居も、動の芝居も押し出しが強く、堂々たる主役ぶりです。殺陣はもちろんのこと、袴さばき一つ取っても、「慣れて」ます。美しいです。眼力の凄さや大立ち回りには、さすが成田屋の荒事!と感嘆してしまいます。見事な「いい男」っぷりでもあります。日本映画界にとっても貴重な役者です。
唯一三池らしい匂いがしたのが、満島ひかりが夫の亡骸の手から竹の棘を抜き、血染めの菓子を食べる場面。ここの暗い情念こそは、ザ・三池崇史です。
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コメント
海老蔵凄い人ですね。
あの品格は今他の追従を許さないでしょう。
最近、ちゃんとした時代劇観たこと無いので、この作品にあって何だかほっとしました。
世界41ヵ国に配信されたそうですが、美しくも悲しい日本人に
外国人の方が感動してくれそうです。
投稿: YUKO | 2011年10月25日 (火) 21時29分
YUKOさん、コメントありがとうございます。
年齢的にはちょっと背伸びしてるわけですが、芝居の強度で乗り切ってましたね。
昨年来、時代劇ブームとか言われてますけど、この作品が一番キチンとしてます。堂々とした風格がありますよね。
投稿: 大江戸時夫 | 2011年10月25日 (火) 22時36分