« 浪花のマック | トップページ | 「スマグラー おまえの未来を運べ」:拷問痛い! »

2011年11月11日 (金)

原研哉の「日本のデザイン」

Dsc_0871

岩波新書から出た原研哉『日本のデザイン --美意識がつくる未来』を読みました。あのデザイン哲学者とでも呼ぶべき原さんが雑誌『図書』に連載していたデザインに対する考察を集めた1冊。原さんってデザイナーは、無印良品のコピーなども書いてしまう人だけに、実に文章のうまい人なのです。これまでの著作『デザインのデザイン』や『白』などでもそれは明らかでしたが、本書においても見事な筆致で、美しく才気溢れる文を展開していきます。

「美意識は資源である」と題した序章からして、読む者を惹き込みます。天然資源の無い日本の資源とは「繊細、丁寧、緻密、簡潔」にものや感興をしつらえる知恵や感性なのだそうです。実にうなずける話です。繊細、丁寧、緻密、簡潔・・・それは茶道や生け花、作庭などの伝統文化に共通するのみならず、クルマ作りや建築やパッケージデザインや、それこそサッカー日本代表のスタイルにまで生き続ける日本の美意識のキーワードです。もちろん原氏のデザインこそがそうであることは、言うまでもありません。

移動、シンプルとエンプティ、家、観光、未来素材、成長点 という各章が、デザインのみならず日本という国のこれからのあり方を解き明かしていきます。今後の日本の生きる道を指し示す原氏の論調は、さすがに武蔵野美術大学教授だけあって、深いレベルでの本質的考察となっています。むしろ章を追うごとに「デザイン」からはどんどん離れていくのですが、「もの」ではなく「こと」の創造に関わってきたと自認する著者にしてみれば、極めて自然なことなのでしょう。 2011年の地平から未来の日本を透視する好著だと思います。

|

« 浪花のマック | トップページ | 「スマグラー おまえの未来を運べ」:拷問痛い! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 原研哉の「日本のデザイン」:

« 浪花のマック | トップページ | 「スマグラー おまえの未来を運べ」:拷問痛い! »