「恋の罪」:わたしのとこまで堕ちて来い!
映画『恋の罪』は、『冷たい熱帯魚』に次ぐ絶好調・園子温の長編。こいつもかなりの毒性を持った狂気の作品です。ただ『熱帯魚』のようなナマな人体損壊描写はほとんどなくて(ま、序盤にちらりとありますが)、むしろ精神的損壊というか、心の闇に迫ろうとしています。
ただ、それがどこまで成功したかと言うと、今回はちょっとコントロールし損ねたのでは?といった印象です。『紀子の食卓』や『愛のむきだし』や『冷たい熱帯魚』に較べると、爆発力も闇の深さも底知れぬ狂気も、みな中途半端で不完全燃焼な気がしてなりません。女性の描写が男目線過ぎる気もします。 詩人でもある園監督らしく、田村隆一の詩やカフカの『城』を象徴的に用いたりしているのですが、これまた成功しているとは思えません。
でもでも、冨樫真の大学助教授/立ちんぼ娼婦はメフィストフェレスとして、凄かったです。ほとんど演技賞ものの狂ったパワー!その顔の、目の、声の、強さ! 「おまえはきちっと堕ちて来い! わたしのとこまで堕ちて来い!」という怒声には、圧倒されます。映画史に残る名言の場面です。 彼女の母親役の大方斐紗子の“上品”な悪意も、笑えるし圧巻でした。
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