「ハラがコレなんで」:粋な女版寅さん
映画『ハラがコレなんで』は、かなり笑える人情コメディー。『川の底からこんにちは』で高評価を得た石井裕也監督、本年の『あぜ道のダンディ』では、非常にギクシャクとして面白くなかったのですが、本作ではなかなかに楽しませてくれます。
それにしても映画の仲里依紗って、なんでこんなにいいんでしょう!(TVだと大したことなかったりするのに) 『モテキ』では登場場面が少なくて「見足りない」印象でしたが、この作品では出ずっぱりの堂々たる主演です。彼女の妊婦姿の堂々たること!足を開いて、おなかを支えながらの妊婦歩きが本物っぽいったらありゃしません(ちなみに役柄は24歳、彼女自身は21歳です)。そして仲さんは表情が豊富で、いいんですよ。
彼女の台詞がことごとく名文句です。「OK」と「粋だねぇ」が口癖で、きっぷのいい下町っ子って感じ。「粋か粋じゃないか」が全ての価値判断の基準。「大丈夫。風向き変わったら、その時ドーンと行けばいい」だとか「今までもこれからも、あたしの人生に安定期なんてないんですよ」だとか、「風に聞いてごらん」だとか名言の宝庫。こりゃー、「女寅さん」ですね。粋でハードボイルドな妊婦ヒロイン(ヒーロー?)。是非シリーズ化してもらいたいもんです。1作ごとに一人産んだりしたら・・・、笑えます(?)。
仲さんに較べると、中村蒼くんはじめ周りの役者はちょっとパワー不足で魅力薄。唯一、『川の底からこんにちは』の稲川実代子さんが、お見事です。80代の老女役ですが、プロフィール見ると彼女ってまだ60歳なんですね!びっくり。
大江戸も「粋」は「でえ好き」でしてね。本作でも「日本人の美意識」とか言ってますけど、小生の定義の一つとしては「実利を後回しにするやせ我慢の美学」ってところ。いかがでしょうか?
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