「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」:目と耳と心で
映画『聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-』は、成島出らしくウェルメイドな140分。オーセンティックでありながら、現代の戦争映画らしい視点も兼ね備えた良作です。
戦争の全体像ではなく人間・山本五十六にフォーカスしたことが、作品成功のポイント。大きい人です。見事な人です。少なくともこの映画の中では。 オンでもオフでも魅力的な人として描かれていますし、役所広司が説得力を持って堂々と演じています。 結局今こういう人物を演じられる日本人俳優って、役所さんか渡辺謙かのどちらかになっちゃうんですよねー。
現代へ通じる要素として、組織の中での人間の葛藤なども描かれますが、それ以上に痛烈に描かれるのが新聞報道の戦争責任。新聞社主幹役の香川照之が本作中唯一の悪人キャラとして、とっても嫌な感じを振りまいています。彼の独善性と変わり身の早さが、まさに五十六の対極として描かれます。製作委員会に読売新聞社も入っているのに、いいのか? まあ読売は紙面においても5-6年前に、戦争責任の検証ということで自己批判しておりましたからね。
真珠湾攻撃の後から終盤までの間、やや中だるみがあったのが惜しいですけど、悪くない出来。少なくとも去年の成島作品としては『八日目の蟬』よりもこっちです(まあ小生の一番好きな成島作品は『ラブファイト』ですけど)。
ラストの焼跡となった廃墟・東京は、今の日本人が見ればどうしても東北大震災の被災地とオーバーラップしてくる光景です。本作においてはそこを深読みする必要はないのですが、「自分の目で見て、耳で聞いて、心で感じて、広い世界を見る」ことは、昔も今も変わらず心すべきことに違いありません。
| 固定リンク
コメント