「無言歌」:重い・暗い・辛いの三拍子
映画『無言歌』は、1960年の中国における歴史上の汚点を描いた告発的作品。当然、中国国内では公開されていない作品です。 重く暗く厳しい作品なので、覚悟してご覧ください。間違ってもデートムービーに選んだりしてはなりませぬ。正月に観る映画でもないですよねえ。
騙し打ちのような右派弾圧で、ゴビ砂漠の収容所に送られた男たちを襲う苛烈な日々。筆舌に尽くしがたい飢え(と寒さ)が描かれます。ほとんど「汁」にしか見えない「粥」はともかくとして、飢餓の果てにネズミや、吐瀉物の中の木の実や、仲間の死骸までを口にする「地獄」。こりゃあ確かに、どんどん死んじゃいますわ。
上海から来た女が、夫の死を知った時の慟哭の凄さ。墓(土饅頭)を探してさまよう彼女。 とにかく「観たくないもの・辛いもの・嫌なもの」を延々と見せられる感じです。 大江戸本人も「なんで金払って、こんな辛い思いをせにゃならんのか?」と思いますけど、まあ映画マニアにとっての「義務」のようなもの。楽しい映画がある一方での「税金」のようなものと考えるしかありますまい。
それでも新藤兼人監督がコメントしたように「人間がおかした罪として、はっきりと残しておかなければならない。」ってことですよね。ナチスの罪と同じように、きっちり記録して伝えて、風化させないように次の世代につなぐことが、私たち一人一人の義務なのだと思います。
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