「風にそよぐ草」:自由だ!
映画『風にそよぐ草』は撮影時86歳だったアラン・レネ(いまだ現役!)監督作品。 驚きました!何千本と映画を観て来ましたが、こんなおかしな(奇妙な)作品観たことないです。よりによって、あの『ヒロシマモナムール(二十四時間の情事)』や『去年マリエンバートで』のアラン・レネが、こんな軽妙かつシュールなコメディータッチの「妄想恋愛映画」を作ってくれるとは!
主人公である初老の男の妄想が、とにかく暴走しまくってて笑えます。『モテキ』のセカンド童貞君以上の妄想っぷりで、さすがはフランス人と言うべきなのか・・・。 ただ、十分ストーカー・レベルに至っているこの妄想オヤジの溢れる愛を、なぜかそのマドンナ(?)がガッチリと受け止めちゃううんですよねー。割れ鍋に閉じ蓋ってこと? 一方で、美人の若い奥さんは淡々と受け流してるし・・・。ますますヘン。
まあ、その他にも(アルモドバルばりの)カラフルな映像の中に繰り広げられるディテールや台詞のおかしさやくすぐりが、本当に楽しいと同時に、レネの余裕綽々たるところを感じさせてくれますが、やはり怒涛の終盤で、その「何ものにも縛られない自由さ」はピークに達します。観ていて、「えーっ?!」の連続です。そ、それってアリですか・・・? レネ御大にとっては、何でもアリのようです。じ、自由だ・・・!
(以下ややネタバレあり) ラストの唐突かつ不可思議な台詞「猫になったら猫のエサ食べられる?」をどう解釈するかは、観る者に委ねられています。 小生としては、「猫になれば失うものも多いけど、確かに猫のエサは食べられる。猫にならなければ、その反対。どっちを取るかは、その人の考え方次第。」ってあたりかなあと思うのですが・・・でも、こんなノーマルな解釈では、レネの破天荒なまでの自由さに吹き飛ばされてしまうんでしょうね? 『一枚のハガキ』の新藤兼人もかなりスコーンと突き抜けてましたけど、本作のアラン・レネこそは最強です。無敵です。
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