「セイジ 陸の魚」:主人公が? but 撮影が見事
映画『セイジ 陸の魚』は伊勢谷友介の第2回監督作品。前作『カクト』は暗く乱調な失敗作だったと思うのですが、本作はむしろ端正な作りながら、やはり明るくはありません。
山の中のクセのある人々と、謎めいた空気と犯罪(あるいは事件)っていうと、『ツイン・ピークス』ですけど、本作もあのリンチ的な方向に進んだ方が良かったような気がします。なんか伊勢谷監督って、哲学的な思想性がかなりむき出しで、作品として昇華できていない気がするんですよねー。 クライマックスにセイジがとった行動なんて、まったくもって理解不能です。少なくともこの映画の中では、その行動がある種の説得力を持って描かれてはいません。
西島秀俊のセイジがあまりにもコンセプチュアルな人物像で、リアルな人間の匂いがしません。何考えてるかわかんないし。小説までならギリギリ存在できるキャラクターなのかも知れませんが、映画で実像を伴ってしまうとムリですねー。 ただ腹筋をはじめスリムで鋼のような肉体は、凄いです。あの『CUT』と同時期の撮影らしく、『CUT』仕様の肉体なわけですね。 あと新井浩文がいつも以上にハマってました。彼が出ると画面の緊張感が違ってきます。さすがです。
裕木奈江さんは相変わらず若々しく(41に見えない!)おキレイでした。ただ演技賞をもらえるような芝居ではない。もう少し芝居の見せどころがあって、彼女にフィットする良い役に巡り合えるといいのですけど。でも昔ながらの涼しげな声、いいですよねー。彼女をもっと使おうよ、日本映画界。
撮影が素晴らしいのですが、新人の撮影監督(板倉陽子)だったのでびっくり。どうも市川準や犬童一心作品の助手をやってた人のようです。風景のロングショットの美しさや空気感の表現、闇の表現・・・、なんといっても女優の撮り方をわかっているのが見て取れます。近年ではレフすら当ててないんじゃないの?ってぐらい、顔に嫌な影が出たり、ブスに撮ってる人が多いのに、誠に貴重です。今後が楽しみです。
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