「ガラスの動物園」:またしても深津絵里が素晴らしい
Bunkamuraのシアターコクーンで、舞台『ガラスの動物園』を観ました。5列目真ん中へんで、舞台まで5-6m。 言わずと知れたテネシー・ウィリアムズの名作をあの長塚圭史が演出。新しさを取り入れた古典として、成功していたと思います。
セットは遠近感をつけた部屋1つ。左右両側に3つづつのドアがあり、テーブルやソファーは場によっていろんな位置に動かされます。で、それらを動かすのは黒衣(くろこ)ではなくて、この部屋の壁と同じ色、同じ汚れ方の衣装を身に着けた珍妙なダンサーズ(9名全員女性)。彼女たちが、不気味な動きでドアから体の一部を覗かせたり、暗黒舞踊×不思議なキノコみたいなヘンな動きを見せるあたりが、今回の演出の冒険ですね。
あとはオーソドックスに、役者の力量に委ねます。母親役・立石涼子のハマリ具合と怒声の迫力。 鈴木浩介のアメリカ人成り切り具合と、「へー、こんな役もできるんだ」感(すみません、『ライアーゲーム』の印象が強すぎて・・・)。 そして瑛太、正直彼がここまでやれるとは思っていませんでした。立派に、上質な舞台の演技が出来ています。
そしてお目当ての深津絵里さんは近年の絶好調を維持し、非常に高いレベルでの良い仕事を今回も見せてくれました。まさにガラス細工のような繊細さで、対人恐怖症的な精神の脆さ、不安定さを見せながらも、哀しくも守りたくなるようなイノセンスを滲ませるあたりがふかっちゃんの独擅場です。こういう役柄の芝居って、割とステレオタイプになったりトゥー・マッチになったりしがちでして、彼女にしても前半はその陥穽にはまっているきらいがありました。でも鈴木浩介との長い二人芝居では、もう圧巻と言うしかない魂の演技を見せつけていました。さすがです。 ラストでろうそくの炎を吹き消す彼女の顔の神々しかったこと! それにしても重く救いのない話ではあります。でも普遍的で、心に迫る作品です。
カーテンコールでもふかっちゃんは微笑まず、緊張したかのように硬く真面目な表情。最後まで役に入り込んでいました。他の出演者と歩幅を合わせるべく、やけにズンズン急ぎ足で歩いていたのが印象的でした。
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