「生きてるものはいないのか」:終末の狂ったコメディー
映画『生きてるものはいないのか』は、石井聰互改め石井岳龍の久々の新作。と言うよりは生まれ変わった新生・石井岳龍の第1作といった趣き。
岸田賞を受賞した前田司郎の戯曲をもとにした映画化(脚本も前田)だけに、その台詞の応酬が実に舞台的。軽ーいノリの大学生たちの脱力系リアルな台詞が、絶妙な間で繰り出されて、実に新しい感覚。しかもかなり笑えます。 相当新しい「映画の冒険」をやっている感じ。もし、これをコメディーと呼んでいいのなら、森田芳光が『の・ようなもの』でやった事に匹敵する革命です。 まあコメディーだとしても、「狂ったコメディー」と呼ぶべきでしょうが・・・。
『メランコリア』『ニーチェの馬』など、最近妙に目につく「終末映画」の1本に数えることもできるでしょう。この3本に共通するのは、「情報から隔絶された状況」ってあたりも、興味深いところです。 そして本作のキモは、いつもの日常が「じわじわと」変質していくところです。 知った顔も少々いますが、多くの無名の役者たちが効いてます。
(以下ネタバレあり) 染谷将太くんが出てくるので、観てる方としてはどうしても『ヒミズ』を連想してしまったりもします。特にラストで「生きてるものが誰もいなくなってしまったかもしれない」世界にたたずむ彼のショットに、ある種の既視感を感じながらも、そこに漂う絶望感と諦念は『ヒミズ』の真逆に位置するものでしょう。むしろゾンビ映画のような・・・。
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