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2012年3月12日 (月)

「ニーチェの馬」:世界の終りまでの生

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ハンガリーの鬼才タル・ベーラ監督が、自らの「最後の作品」と宣言した映画『ニーチェの馬』は、凄かったです。モノクロ、2時間34分、孤高の傑作です。

横殴りの暴風が絶えることなく吹きすさび、その中を黒い灰のような小片が舞う、「終末的風景」の中での6日間。作品の9割以上の時間、登場人物は初老の男とその娘の二人だけ。淡々とその暮らしを描くだけという、「映画の極北」とでも呼ぶべきミニマルさです。二人が無言で水を汲み、労働をし・・・って、ほとんど新藤兼110913_niche_sub1人の『裸の島』じゃありませんか。 食事だって、煮たじゃがいもの皮をむいて、ぐしゃっとつぶして、ほふほふと熱いのをほおばる(父の方は塩をちょっとつける)のみ。しかも半分も食べずに残して捨てちゃったりするので、「だったら二人で1個でいいじゃん」などと、いらぬ心配をしてしまいました。

先日観たラース・フォン・トリアーの『メランコリア』を思い出さずにはいられない内容でした。こちらでは明確に提示されはしないものの、地球の最後というか人類の最期というか、絶望的な黙示録的世界に違いはありません。どちらも「馬」が出てきましたしね。 そのほかにも、窓の外に見える1本の木はタルコフスキーの『サクリファイス』だとか、丘と斜めの道はキアロスタミだとか、いや丘の稜線はベルイマンの『第七の封印』だとか、いろんな作品を思わせてくれました。

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長回しやじんわりズームが効いてます。その時間が、観る者に「終末の絶望」を感じさせるのです。退屈なほどルーティーンな日々の営みの延長線上に、世界の終わりが一歩づつ迫って来ます。いや、世界が終るその日までルーティンな日常を過ごしていくことこそが、我々にとっての「生」なのかも知れません。

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» ニーチェの馬 [佐藤秀の徒然幻視録]
まるで近未来世界滅亡SF映画 公式サイト。ハンガリー映画。モノクロ。原題:A Torinoi Lo、英題:The Turin Horse。タル・ベーラ監督、デルジ・ヤーノシュ、ボーク・エリカ、コルモス・ミハリ ... [続きを読む]

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