「ヒューゴの不思議な発明」:ベストof3D、ベストofスコセッシ
映画『ヒューゴの不思議な発明』は、その子供向きみたいなタイトルで損をしているのでは? 大人も子供も楽しめる、見事な傑作です。今年今まで観た中では、小生のベストです。3Dで観ましたが、今まで観た3D映画の中でもベストの効果を発揮していますし、今まで観たスコセッシ映画の中でもベストです。
3Dって画面が暗くなりがちですが、本作はきらびやか。パリの輝き、映画の光、機械のきらめきなどが、見事に美しいのです。 冒頭のパリの街から空飛ぶ視点で、ぐいーんと駅構内を滑空し、ヒューゴの顔まで行く、CGIならではの1ショット! ああ、画面を見つめることの驚きと喜びに溢れています。あたかも(作中に登場する)創世記の映画を見つめた観客が感じたセンス・オブ・ワンダーのように。
それにしても見事な演出、見事な絵造りです! 美術の見事さ、撮影の見事さ、そして3D効果の見事さ。スコセッシ、こんな芸当ができたんですね。だったら『ディパーテッド』なんかじゃなくって、この映画でオスカーを手にしてもらいたかったなあ。「眼福」とは本作のためにあるような言葉です。
映画への愛、映画の歴史への敬意に貫かれていて、そういった意味でも大江戸としては愛さずにいられない作品です。篇中にもメリエスの『月世界旅行』をはじめ、グやリフィスの『イントレランス』とかロイドの『要心無用』とかキートンとかチャップリンとか、オールドシネマの引用が多々あります。笑っちゃったのはエイゼンシュタインの『戦艦ポチョムキン』における、ライオン像が立ち上がる3段階のモンタージュを応用した、迫り来る機関車のモンタージュ。やってくれるね、スコセッシ。
役者たちもみんないいんです。メリエス役のベン・キングスレーのコワモテから滋味溢れる表情への変化。サーシャ・バロン・コーエンのヒール役が見せる人間味。ヒューゴ君(エイサ・バターフィールド)の憂愁と素直な魅力。そしてヒット・ガールことクロエ・グレース・モレッツの可愛いさと達者な演技。 クリストファー・リーの枯れ方も、貴重な味わいでした。
映画ファンで映画史を知っているほど楽しめる作品ではありますが、そうでなくても大丈夫。見事な視覚体験であり、エンタテインメントとして完璧です。
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