「先生を流産させる会」:胸苦しい教育映画
映画『先生を流産させる会』は、2009年に愛知県の中学校で起きた実際の事件をモチーフに、アレンジを加えたフィクションです。小生も当時新聞報道を読んで「先生を流産させる会」という言葉の禍々しさに衝撃を受けましたが、本作の内藤瑛亮監督もまったく同じだったそうです。
冒頭のウサギの場面からして、とてもいやーなものを見せられてる感に溢れてます。62分の短い映画だというのに、ずーっと「やめてくれええぇ」的に、早く終わってくれることを願ってました。 ここには主犯格の少女の「理由のない悪意」が渦巻いてます。その上に、モンスター・ペアレンツの理不尽な憎悪まで加わって、観ているこちらはそれらへの憤りで胸が苦しくなるのです。小生は完全に佐和子先生に同化して観てました。
監督は実際の事件では男子生徒達の犯行だったのを、あえて女子生徒たちの物語に改変しました。そこに創作の意味が出てきています。センセーショナルな事件性ではなく、普遍的な考察になっています。産む性としての女性と、そこに向かっていく自分たちの体への恐怖を制御できない心の幼さ・・・。ただ主犯格の女子(混血のような顔立ちだが)の親やバックグランドを一切出さないことによって、紋切り型の旧弊にははまらなかったものの、一方では彼女が悪の塊のようなモンスターとして描かれてしまったきらいはあります(ホラーみたいに)。
先生役の宮田亜紀がパワフルな好演。これを観たら、彼女を使いたがる映画監督って結構いそうな気がします。 彼女に限らず役者たちの芝居がしっかりしているのも、低予算の本作がチープにならずに済んだ理由の一つです。
ラストがあと一歩決まり損ねた感もあるのですが、「教育映画」として成立したとも言えるでしょう。 いずれにしても胸に鉛の重さが残る問題作だと思います。
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