「愛の残像」: 「雨月物語」も観てね
フィリップ・ガレル監督の『愛の残像』は、この愛の巨匠らしい孤高の考察。現代にもまだこういうフランス映画があることの驚きを感じさせてくれる作品でもあります。
とにかくモノクロの映像が美しく、突き刺すような力を持っています。右の写真の女が床に寝そべっているシーンなんて、その物質感とか、マグロかと思えばアザラシ、かと思えば死体、そして女・・・といった静謐な映像の魔力が、観る者を捉えるのです。
(以下ネタバレあり) 終盤、物語は急旋回して幽霊譚になっていきます。ただ、この品位と古風な絵(アイリスアウトなんか使ってまして・・・)と妄執と哀しみは、溝口の『雨月物語』のテイストを連想させるものでした。
でもこのヒロインって、(大江戸の趣味の問題かもしれませんが)ちょっとシャーリー・マクレーン顔だったり、多少肉づきが良かったりする「華のない顔だち」で、そこがひっかかりました。幽霊になるんなら、もう少し薄幸顔であるか、もしくは凄みのある美を体現してもらいたかったものです。
それにしても、各映画サイトを見ても、本作のコメントやトラックバックは一つもついてなかったので、びっくり。この手の単館系作品って、シネコンでやるメジャー娯楽作と較べて、あまりにも極端に少ないですよね。あらゆる映画に分け隔てなく接している小生としては、そこらに驚いてしまったりもするのです。
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