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2012年7月 9日 (月)

「ファウスト」:悪夢のイメージ

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映画『ファウスト』は、冒頭に明記されているように、ゲーテの原作をソクーロフが自由にアレンジした作品。 自由すぎて相当に珍妙な作品になっていると言えるかもしれません。

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そもそも娘さんが出てくるのも、ファウストが悪魔と契約を結ぶのも、この2時間20分の映画のけっこう後ろの方。そこからしてヘンですよね。それまでは何が行われるかというと、ソクーロフ作品恒例の「睡魔との戦い」。この激しくも厳しい戦いを生きおおせた者だけが、「物語」にたどりつけるのです。

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ソクーロフの映画は感情を描きません。ですから、観る者も映画にのめりこめず、物語に同化できません。あたかも神の目のように、超然たる視点で出来事を記録していくだけの作品に対して、鑑賞者はあまりにも無力です。小生も批評する言葉を持ち得ません。ただ、好きな作品でないことだけは確かです。

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少女は、どこがそんなにファウストを惹きつけたのか謎だと思わざるを得ない、美少女とはほど遠い顔つき。ただ、泰西名画にはこんな顔が沢山出てきますよね。 そして彼女にあっさりと瓶を落とされて、苦労が水の泡になってしまう人工生命「ホムンクルス」(『ウルトラQ』の人工生命M1号を思い出したのは、多分私だけでしょう)の悪夢のようなイメージ。いや、そもそもこの作品全編が、色彩を洗い落した悪夢のようです。鏡を用いた映像が歪んだり、縦横比が妙な感じになったりするのも悪夢効果。スタンダードサイズの画面が角(かど)マルになっているのも、現実ではない世界だと規定しているかのように思えました。

そもそもこのトンデモ・ラストだって、岩の隙間から聞こえる悪魔の声が、ぞっとするほど恐ろしい悪夢のイメージではありませんか。

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