「おおかみこどもの雨と雪」:物語の力
細田守監督+奥寺佐渡子脚本の『時をかける少女』『サマーウォーズ』に続く新作『おおかみこどもの雨と雪』は、前2作を凌駕する傑作でした。
アニメだから成り立つお話というか、実写や3DCGにしちゃうとこの味は出ないし、ファンタジーして成立しなくなってしまいそうです。そして「日本人に生まれて良かったー」と思うほどの、日本的感覚の冴えを見せながら、一方ではグローバルに通用する普遍的な作品にもなっています。
娘のナレーションという技を使うことによって、母の学生時代に始まって、妊娠、出産、そして子供たちの成長を、13年という時を追いながらじっくりと描いていきます。時間的にもとても「じっくりと」描くことはできないのですが、絵と声と演出の力で、朝の連続テレビ小説に半年つきあった時みたいに、時の経過と人の成長をしっかり見守った気持ちになってしまうのです。もちろん宮崎あおいの(声の)演技力によるところも多大です(彼女は今年、『わが母の記』でも高校生から三十路女までの移ろいを実写で見事に演じ分けていました)。
日本家屋や森の表現とか、雨の描き方も感銘を与えてくれるものですが、雪山滑走シーンのあのスピード感、躍動感は本作の大きな見せ場でした。喜びと未来へ向かう生命力に漲っていて。宮崎駿の「飛翔感」や「滑空感」に対抗するようでもあり・・・。
それにしても、この少し無理があるかと思われた「物語」にしっかり引きずり込み、がっしりと見せ切る力は大したものです。
それは『時をかける少女』『サマーウォーズ』同様、「物語」を語るんだという細田監督の明確な覚悟ゆえだと思いました。
終盤はやはり、・・・泣けました。
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