« 「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」:支える夫の物語 | トップページ | 「ヘルタースケルター」:ガーリーでカラフルなバッドドリーム »

2012年7月14日 (土)

「少年は残酷な弓を射る」:不安で不快なサスペンス


341378_006

映画『少年は残酷な弓を射る』は、観ている間ずっと「早く終わってくれえ!」と叫びたくなるような、怖さと不快さを持った作品。なぜこんなことが起こっているのかがわからないまま進行し、観る者の緊張と不安をあおりまくります。二度と観たくはないけれど、なかなか類例のないトラウマ系サスペンスです。

341378_002

冒頭の奇祭「トマト祭り」の俯瞰から始まって、飛び散る血のような赤のイメージが全編を貫きます。壁の落書き、壁の地図に飛び散る絵の具、Tシャツの柄・・・、これらが惨劇を予感させ緊張感を高める、不快な仕掛けとなっています。あたかもホラーのように。 そういった仕掛けとしては、やはり不吉な感覚の三味線が音楽に使われていますし、一方でバディ・ホリーの“Every Day”をはじめとするストレートにハッピーな楽曲の数々が、対位法的に用いられています。

341378_001_2

物語は時間を交錯させた回想形式で、徐々に徐々に全体像に迫っていきますが、終始肝腎の部分を覆い隠しつつ進行するので、観る者の神経は不安定なまま擦り減っていくのです(特に気の弱い小生などは)。まさに「宙ぶらりんの状態」=suspence ですね。.

(以下ネタバレあり) そしてやはり惨劇は起こり、物語は収束するのですが、結局のところ観る者の「なぜ?」は全く解決されないのです。これこれこういう理由で・・・っていう説明はひとつも無く、観終わってもさらに「宙ぶらりん」が続くのです。 そこがユニークでもあり、物足りなくもあるところです。 いちばん近そうな推測としては、「母の愛を切望し、母の注目と関心を独占したかった。それが極めて歪んだ形で表出した」といったところですが、まあこういう謎解きを持ち出さなかったことにより、陳腐化は避けられました。とはいえ、何にもナシってのもねえ・・・。そこまで全てを観る者に委ねるってのは、製作者側の「ネグレクト」ではありますまいか?

341378_005

小生のごひいき女優ティルダ・スウィントンが、いつもながらのナーバスな好演。この人のおかげで、主人公のデスパレートないたたまれなさかげんが増しました。 少年ケヴィン役の3人の男の子たちも、それぞれに「いやーな感じ」マックスで、殴ってやりたいほど不快でしたし。 あー、胸苦しかった。

|

« 「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」:支える夫の物語 | トップページ | 「ヘルタースケルター」:ガーリーでカラフルなバッドドリーム »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/42098/46329148

この記事へのトラックバック一覧です: 「少年は残酷な弓を射る」:不安で不快なサスペンス:

» 少年は残酷な弓を射る・・・・・評価額1450円 [ノラネコの呑んで観るシネマ]
なぜ少年は狂気の弓を射たのか? 赤ん坊の頃から実の母親に懐かず、成長するに従って異様な悪意を無慈悲にぶつける様になる奇妙な少年と、息子への愛と憎悪の間で葛藤する母親。 やがて息子が引き起こした...... [続きを読む]

受信: 2012年7月15日 (日) 23時11分

» 映画「少年は残酷な弓を射る」深層心理の片鱗を見る [soramove]
「少年は残酷な弓を射る 」★★★★ ティルダ・スウィントン、ジョン・C・ライリー、 エズラ・ミラー出演 リン・ラムジー監督、 112分、2012年6月30日公開 2011,イギリス,クロックワークス (原題/原作:We Need to Talk About Kevin ) 人気ブログランキングへ">>→  ★映画のブログ★どんなブログが人気なのか知りたい← 「予告は謎めいていて ... [続きを読む]

受信: 2012年7月16日 (月) 19時32分

« 「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」:支える夫の物語 | トップページ | 「ヘルタースケルター」:ガーリーでカラフルなバッドドリーム »