「BRAVE HEARTS 海猿」:スケール大きな王道娯楽作
『BRAVE HEARTS 海猿』はシリーズ第4作目。青春ドラマの側面が大きかった第1作を非常に評価していた小生ですが、大作化してむしろ下降線をたどっていたように見えていました。しかしここでまた機首を上にしての急上昇。エンタテインメントの王道を行くスケールの大きな作品に仕上がりました。
まあ物語に関しては、災害の種類を替えながらも基本的にはワンパターン。だけど、「通俗の力」で押していく本シリーズにとっては、それで全然オッケーなのです。 今回はジャンボジェットの事故~海上不時着ってことで、いつもの『海猿』モードにプラスして、'70年代の「エアポート」シリーズのような航空パニック映画のテイストが漂っています。ちゃんと消化できていて、悪くありません。
佐藤隆太とその恋人・仲里依紗の比重をそこそこ大きくしたり、飛行機の機長と仙崎(伊藤英明)の掛け合いにドラマ性を込めたり、仙崎と伊原剛志の男騒ぎなドラマを用意したり、相変わらず福田靖の脚本はハリウッド的エンタテインメントのど真ん中を狙って、堂々たるものです(まあ、佐藤を遠避けた仲の理由が薄弱で、これにはちょっとズッコケますが・・・)。
ハリウッド的な堂々と大きな「絵」が撮れているのも、このシリーズの特色。構図やキャメラワークが日本映画離れしていて、今これができるのが本作の羽住英一郎監督と、『踊る大捜査線』の本広克行監督です。 CGもこれまで以上にリアルに見事で、コンテナ船の沈没場面やジャンボ機関連のスペクタクルは、ハリウッドクラスの出来栄え&正しいCGの使い方になっていました。
(以下ネタバレあり) それにしても、この展開で誰も死ななかったハッピーさは、良し悪しですね。これで、機長を救出する際に挟まれた脚を切断するような決断を迫られたり、佐藤隆太が還って来なかったりしたら、映画としての「名作度」はアップしたのでしょうけどね。きっと、そうしないところが『海猿』なんですねー、良くも悪くも。 でも終盤は泣かせの波状攻撃で、かなり涙が出ちゃいました。てへぺろ。
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コメント
「踊る大捜査線」の監督は本広克行監督で、本木克英監督は別人ですが、どちらのことでしょう?
ちなみに、「海猿」の羽住英一郎監督は「踊る大捜査線THE MOVIE」(映画1作目)の頃までは「踊る大捜査線」の助監督でした。
投稿: pipo | 2012年8月 3日 (金) 01時51分
うわわ、間違えました。本広克行監督のことを書きたかったのです。本当に(間違えやすい二人だってことは知っていたのに)申し訳ないミスで、すみません。
(ブログは訂正します)
pinoさん、ご指摘ありがとうございます。そして、羽住監督は「踊る」チームの経験があったのですね。なるほどー。
投稿: 大江戸時夫 | 2012年8月 3日 (金) 22時13分
お久しぶりです。『海猿』観ました。前作が、FINALの割にはショッパイ内容でしたので特に期待しないで観にいきました。
海猿らしいな。というのが率直な感想です。先生も論評されているとおりで、映画になってから主要キャストがアレだけの大事故が続いているのに誰一人殉職していない・・・・。いい意味でHAPPYENDの予定調和ですね。
私は、海上着水を決めるまでのくだりが一番涙腺がゆるくなりました。
投稿: きかんぼう | 2012年8月 4日 (土) 12時06分
おお、きかんぼうさん!お久しぶり。
なるほど、あそこらで涙腺が緩むってのは、やはり仕事で揉まれてるオトナならではですよね。
投稿: 大江戸時夫 | 2012年8月 4日 (土) 23時16分