「Virginia ヴァージニア」:自由で耽美な個人映画
映画『Virginia ヴァージニア』は、近年寡作な上に小品の単館公開ばかりというフランシス・フォード・コッポラ作品。 娘ソフィアの『SOMEWHERE』に出演したエル・ファニングを使って、自由闊達にやりたい放題です。なんか晩年の新藤兼人の「自由さ」に近いものを感じますね。
とにかく映像が美しくって、もう今更「実験的」でもないのですけど、モノクロとカラーを行き来しつつの耽美追究です。特にモノクロの中に差し色の赤だけが鮮烈だったりする素晴らしさは、やはり眼福。かと思うと、やけに素人っぽかったり、(コッポラの出自であるところの)ロジャー・コーマンぽかったりもするのですが・・・。
この闇の中をたゆたう、この世のものならぬエル・ファニングを見るだけでいいような映画ではあります。コッポラも耽美に走り、趣味に走った(エドガー・アラン・ポーまで登場させちゃったりして)あげく、かなりいいかげんなラストで「はい、おわり!」にしちゃった89分ではありました。
主人公の小説家(ヴァル・キルマー)の娘の事故死と自責の念って、それコッポラの息子のことじゃないですか! ボート事故ってことまで同じです。 うーむ、実に個人映画です。自由と言えば自由ですけど・・・。
それにしてもヴァル・キルマー太ったなあ。彼がカッコ悪くて魅力なしなもんで、この映画の世界には合わないっす。 そしてほんっと久々に見ました、ブルース・ダーン! 面影は残しつつも、完全にジジイになってました。 そしてクセの強いナレーションは、なんとトム・ウェイツでした(なぜ?)。
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