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2012年9月29日 (土)

「ル・コルビュジエの家」:ままならない寓話

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アルゼンチン映画『ル・コルビュジエの家』は、ブエノスアイレスに実在するコルビュジエ設計の家屋を舞台にした劇映画。 まあ建築をしっかり見ようとか思うと、ちょっと肩すかしかも知れない映画ですけど、日本の配給にあたっては、大成建設が協賛しています。

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オープニングのタイトルバックが秀逸です。ハンマーで白壁を打ち壊すところを壁の内側と外側から撮ったショットを、左右半分づつ同期させて見せてくれるのです。ハンマーを打ちつけるたびに、徐々に穴が大きくなっていく内側と外側の違い。この映像を見るだけでも、本作を観る意味があるってもんです。

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椅子をはじめとするデザイナーの男が、このコルビュジエ作の家の主。隣人はちょっとコワモテでマッチョ系の男。この隣人が壁を壊して窓を作ろうとするところから、不穏なドラマが始まります。デザイナーは「妻や娘がいるのに、これは困る。違法だ。」との立場。一方隣人の主張は、「真っ暗な部屋に一筋の陽光を入れたいんだ」ということで、至極まっとうな主張かとも思えます。

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それに隣人は、この手の映画によくあるようなアブナイ人だとか凶悪な人ではないのです。けっこう紳士的ですし、男としてなかなかに魅力的な人物だということが、映画が進行するほどにわかってきます。 一方のデザイナーは、映画が進むほどに嫌な所の多い、けっこうしょーもない人物だってことがわかってきます(まあ奥さんに相当プレッシャーかけられちゃってるんですけど)。 最初の常道的人物設定が、だんだんと逆転していく面白さ。

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そして最後に事件が起こります。「あーあ」という複雑な感情を抱かせるエンディング。この世のままならなさってやつですね。 現在の日本が直面している領土問題にも通じるような寓話ともなっています。そういえばアルゼンチンも、フォークランド紛争みたいな領土問題があるわけですからねー。なるほどです。

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コメント

トラックバックありがとうございました。
この物語は最後まで観るとなんとなく「ごんぎつね」を思い浮かべます。

投稿: ochasukineko | 2012年10月18日 (木) 01時18分

ochasukinekoさま、コメントどうも。
「ごんぎつね」ですか!? うーむ、そりゃまた斬新な視点ですね。素晴らしいです。

投稿: 大江戸時夫 | 2012年10月18日 (木) 22時09分

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