「トガニ 幼き瞳の告発」:観る者を憤怒させる告発の力
映画『トガニ 幼き瞳の告発』ほど観る者を憤怒させる作品は、映画史上かつて無かったのではないでしょうか。そう思うほどの告発パワーを持った力作です。鑑賞中何度握りこぶしに強い力が入ったことか。
前半に展開される聾唖学校での悪魔の所業の描写にはもう「やめてぇえええーーっ!」って感じで、スクリーンを凝視するのが辛いほど。あの(言っちゃあ悪いけど温水洋一みたいな)双子の校長と行政室長、そして暴力教師と女寮長の怖さ、いやったらしさを直球で、ぐいぐいと描写していきます。あまりの非道さ、鬼畜かげんに、観ていてはらわたの煮えくりかえる思いです。
(以下ネタバレあり) 事件関与者たちが逮捕されてからも、役所や警察の腐りきった対応とか、裁判で勝つための汚い手段のあれこれとか、あくまでも観客の怒りをあおりまくってくれます。 手法やドラマの作りとして、あえて「通俗」の強さを貫いて、ぐんぐん進みます。
主人公が韓国男子としては珍しいほど(?)物静かでちょっと軟弱なほどの優(やさ)男。観てるこちらとしては、「おまえがもうちょっと、しっかりせにゃあいかんだろう」とか「黙ってないで、もっとハッキリ行動しろよ」とか思ってしまうのですが、実は彼(コン・ユ)が本作映画化の原動力になったのだそうですね。
この結末に救われない無力感を感じるわけですが、でもこの映画が世論を沸騰させ、新しい法律が制定され、この学校も廃校となった事実に、我々はせめてもの救いを感じます。そして改めて映画という表現装置の力の大きさも、再認識するのです。 作ることに非常に大きな意義のあった映画、作られなければいけなかった作品です。
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