昭和の文豪たちの短編小説6本を、それぞれ3-40分程度の短編映画に仕立てて、3本づつ組み合わせて上映するオムニバス『BUNGO ~ささやかな欲望~』。こちらは「告白する紳士たち」篇。
岡本かの子原作『鮨』(大森寿美男脚本・関根光才監督・橋本愛、リリー・フランキー主演)は、そこはかとない「味わい」があって、まさに短編小説の世界。本作のみならず6作品とも短編小説的映画であり、短編小説が文学の中に一定の地位を占めている事を考えれば、「短編映画」ってものも、もっと作られてもっと評価されてもいいのにと思います。
坂口安吾原作『握った手』(向井康介脚本・山下敦弘監督・成海璃子・山田孝之主演)は、うーん、ちょっとどうなんだろ? 奇妙な味ですが、成功してるかなあ。向井・山下コンビの空回りって気も・・・。 成海璃子のロイド眼鏡が面白キュート。
そして3篇中、いや6篇中の白眉と言えるのが、林芙美子原作『幸福の彼方』(鎌田敏夫脚本・谷口正晃監督・波瑠、三浦貴大主演)。
本作に流れる日本的情感、短編小説(映画)ならではの味わいが、撮影の良さ、役者の良さと合わさって見事です。でも何といっても、主演の波瑠の素晴らしさに尽きます! 着物が実に似合って、ちょっと見で裕木奈江や芦川いづみや夏目雅子や大江麻理子に似ていたりもするのですが、可愛らしくも涼やかな和風美人です。
平静を保ってこらえながら落涙するところとか、終盤の電車内での一連の芝居や表情とか、華があり、艶もあり、演技力もあり、いやー大したものです。大江戸の今年の「新人女優賞」有力候補ですね。
ちなみにもう1本の「見つめられる淑女たち」篇は、宮沢賢治原作①『注文の多い料理店』(菅野友恵脚本・冨永昌敬監督・石原さとみ、宮迫博之主演)、②三浦哲郎原作『乳房』(岨手由貴子脚本・西海謙一郎監督・水崎綾女、影山樹生弥主演)、③永井荷風原作『人妻』(山田太郎脚本・熊切和嘉監督・谷村美月、大西信満主演)の3本。 ①は奇妙にハズし過ぎ。冨永監督らしくはあるけど、ちょっと・・・。 ②は水崎綾女の色っぽさが何とも生きていて、なかなかの佳作。 ③は、ちょっと微妙。谷村美月が40歳ぐらいにも見えます。 全体的には、「紳士たち」篇に較べると、だいぶ物足りないのでありました。
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