「危険なメソッド」:どうしたの?クローネンバーグ
映画『危険なメソッド』は、デイヴィッド・クローネンバーグ作品だというのが信じられない外見と内容。『ヒストリー・オブ・バイオレンス』『イースタン・プロミス』で、それまでのクローネンバーグとは違う新しい顔を見せた巨匠が、さらに新しい地平を拓いたのでしょうか?
何しろフロイトとユングの関係と確執を描く、舞台劇がもととなった映画作品。実在の有名人を描く(半)時代劇なんて、クローネンバーグのフィルモグラフィーにはなかったのでは? 美術や衣装が素晴らしく、そして主演の3人、マイケル・ファスベンダー、ヴィゴ・モーテンセン、キーラ・ナイトレイがそれぞれにこの時代(約100年前)を体現する上質の演技を見せてもいます。
うーん、それでも映画が弾んでいかないのです。会話劇として、ひたすら人物の会話で進行する物語=アクションやギミックに頼らないってことで、ある意味「映画性の放棄」。こういうものをあのクローネンバーグが作ろうとは・・・。どうも調子狂っちゃいます。 会話劇だって、それを生かす術があるってもんでしょうし、「疾走する会話劇」だってあるわけです。なのに、あえて盛り上がりを拒否するかのような、この淡々ぶりは何故?
少なくとも大江戸が観たかったクローンネンバーグ映画ではありませんし、大江戸が観たかったフロイトとユングの映画でもありません。 そういえば本作の撮影監督は、クローネンバーグとのタッグも多いピーター・サシツキーですが、彼のフィルモグラフィーには、かの『ロッキー・ホラー・ショー』や、ケン・ラッセルの『リストマニア』『バレンチノ』なんかもあります。そうそう、フロイトとユングの精神分析的対決なんて、全盛期のケン・ラッセルがハチャメチャにやらかしてくれたら、さぞや過激な傑作になったろうなあと夢想する大江戸なのでした。
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