「ヴァンパイア」:静謐な岩井ワールド
岩井俊二の新作『ヴァンパイア』、なんと長編劇映画の新作は『花とアリス』以来8年ぶりだとか。うーん、働き盛りに何してたの、岩井さん? でもでも今回は、プロデュース・脚本・監督・撮影・音楽・編集と一人6役で、作品を完全にコントロール。アメリカで撮っても、正真正銘の「岩井ワールド」になっています。
静謐でクールな映像の中を、さっぱり系で体温の低そうな男女が静かに語らいます。メインキャストの顔立ちは知的で怜悧(むしろ蒼井優だけ異質)。主役の男なんか、かなり岩井本人入ってます。そういった意味では、かなりの割合で「ヴァンパイア映画の形を借りた私映画」なんでしょうねえ。
温度の低い映像が、ひたすら美しいのです。そしてガラス瓶にたまっていく血液の美しくも恐ろしい、恐ろしくも美しいそのさま。そして夢幻境のようなラスト。 でも好き嫌いがハッキリ分かれる映画でしょう。この世界にノレなければ、普通の吸血鬼ホラーがお好みなら、そりゃあ当然アウトでしょう。
映像温度も登場人物の体温も低くて、静謐で・・・、このトーンを持つ映画を思い出しました。森田芳光の『ときめきに死す』です。そういえば、あの作品のラストも「牙と血しぶき」という吸血鬼映画の条件を満たしていたことに、今気づきました。
| 固定リンク
コメント