「サイド・バイ・サイド」:映画関係者&ファン必見
映画『サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ』は、キアヌ・リーブスが企画制作しナビゲーターを務めるドキュメンタリー。映画の記録フォーマットがフィルムからデジタルへと劇的で急激な変化を遂げている現在の状況とそこに至る歴史を、多数の映画人へのインタビューを通して描き出します。
とにかくインタビュイーたちが豪華で、マーティン・スコセッシ、デイヴィッド・リンチ、ジェームズ・キャメロン、デイヴィッド・フィンチャー、クリストファー・ノーラン、ウォシャウスキー姉弟、ラース・フォン・トリアー、ダニー・ボイル、スティーブン・ソダーバーグらの監督たちに加え、ヴィットリオ・ストラーロ、ヴィルモス・ジグモンドをはじめとする撮影監督に加え、編集者、技術者、機材屋さんなどが、キアヌのインタビューに答えていきます。
中ではやはりスコセッシとリンチが印象的でしたねえ。特に超然とした面持ちのリンチが「誘導するなよ、キアヌ」なんて言うところは最高ですね。 それから、ウォシャウスキー兄弟が「姉弟」に変わってから、動く映像のラナ(姉)を初めて見ました。 とにかく多彩な映画人たちを観てるだけで、映画ファンとしてはたまらなく面白いのです。
今、制作から興業に至るまで映画界の仕組みを大転換させつつあるデジタルシネマについてわかりやすく、しかも多面的な視座からの証言や意見をまとめた本作の価値は、かなり高いものだと思います。本作はフィルム派、デジタル派、どちらにも偏ることなく作られていますが、フィルム派の人々も「近い将来はフィルムが特殊なものとなり、ほとんどの映画はデジタル撮影になる」ということを予期し、理解しているのが印象的でした。 そして、「デジタルはフィルムのように退色しないから、永久保存には最適なのだろう」と考えていたらさにあらず、保存と言う面では、なんとフィルムこそが一番なのだと知って驚きました。ハード・ディスクだと結構動かなくなってしまうことがあるし、再生できる機器がなくなってしまったらアウトなのです。これには目からウロコが落ちました。
まあ何だかんだ言っても、結局はリンチの言う通り「全員に紙と鉛筆を持たせたからといって、秀逸な物語がたくさん生まれるわけじゃない。今の映画の状況も同じだよ」っていうのが真理なのでありましょう。 映画に関わる人々にも、映画ファンにも是非観てもらいたい作品です。
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