「フライト」:お酒はほどほどにね
映画『フライト』は、良くできているんだけど、同時に現代のアメリカ映画作りの難しさを表してもいるいる作品。その昔のフランク・キャプラ時代だったら、もっとシンプルなヒーロー譚になったことでしょうし、'70-80年代だったら主人公をダーティー・ヒーローまたは悪役に設定したニューシネマ的もしくはピカレスクものの方向性を得たことでしょう。でも現代は、いろいろと複雑であります。
序盤の飛行機事故に至るシークェンスの描写が見事過ぎます。さすがはゼメキス。細かい部分の描写がリアル感を出すことを熟知しています。編集も見事。
とにかくデンゼル・ワシントンの達者さに感心すべき映画ではあるのですが、脇がみんな魅力的で、この映画に厚みを与えています。ドン・チードルにブルース・グリーンウッドのコンビネーション、メリッサ・レオの最後の表情、ガン患者ジェームズ・バッジ・デールの凄い存在感。そして突然コメディーから乱入してきたようなジョン・グッドマン(ストーンズ」の「悪魔を憐れむ歌」や「ギミー・シェルター」をバックに登場するあたりが、これまた笑えます)!
それにしても「アル中は身を滅ぼす」キャンペーン的な作品でもありますね。まあ、そりゃこんな機長の運転にはつきあいたくないですし、この「やめられない」感にも、ああやっぱりそういうものなのねと思います(あの、ミニバーのあたりの描写!)。とは言うものの、「禁煙」に次いで「禁酒」に再び突き進むかのようなアメリカという国を見ていると、「それもいいけれど、そのエネルギーの何分の一かを銃規制に向けた方がいいんじゃないの?」と思ってしまう大江戸なのでありました。
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