「桜、ふたたびの加奈子」:円環と映像センス
映画『桜、ふたたびの加奈子』はなかなかの異色作。栗村実監督の映画的なセンスの良さが溢れ出ています。
皿、フライパン、円形モビール、丸いミラー、フラフープなどなど執拗に繰り返される円環のモチーフ。輪廻転生を暗示するのでしょうか。それら円環ショットの多くを俯瞰で捉え、さらに俯瞰に関しては川の流れを俯瞰で撮ったショットにより(水面を流れる木の葉や桜の花びらが)季節を表すなど、映像で作品を語り切ろうとする強い意志が感じられます。絵の力で物語が回っていきます。今の日本映画界において珍種となっている「映像派」の称号を捧げたい監督です。
(以下ネタバレあり) サイコホラー的なサスペンスを感じさせる展開で、途中から「どう着地させるんだろう?」と思いながら観ていました。すると、なんとなんと終盤に今までのミスリードをひっくり返す展開があり、「おお!」となります。原作の功績かも知れませんが、ホンも演出もきっちりしていて、嬉しい驚きでした。 最後の最後にもう一つ(軽い)驚きがあるんですけどね。
広末涼子が今回も達者な演技を見せてくれます。そして、あるシーンで「すっぴんメイク」の彼女をやや仰角で撮ったショットは、『二十世紀ノスタルジア』における16歳位の彼女と同じ顔でした。
予想以上に面白く、また質の高い作品でした。栗村監督の今後に期待大です。
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