「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」:良い小説
村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を発売日(4/12)の朝8時39分に買いました。通勤時に駅前の書店がいつもより早くあいていたので(この本のためにあけたのでしょうね)。仕事帰りに見ると、もう売り切れてました。初版50万部なのに、凄いなあ。
一言で言って「良い小説」だと思いました。スムーズに読めて、文章を味わえて、心を波立たせたり、しめつけたり、ちょっと感動させたりしてくれる。小説でしか成し得ない方法で、読む者に何かを感じさせ、何かを考えさせ、何かを与えてくれます。
春樹さんは以前から大作やヘヴィーな作品を作り上げたその次に、(リハビリ的な意味も込めて)コンパクトで軽めのラブストーリーを書いています。 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の後に(もともとはもっと軽く短くの予定で書き始めた『ノルウェイの森』。『ねじまき鳥クロニクル』や『アンダーグラウンド』の後に『スプートニクの恋人』といった具合。本作も『1Q84』の次にふさわしい(良い意味での)軽さを持った変種のラブストーリーと言うことができるでしょう。 そして小生は、『国境の南、太陽の西』とか『スプートニク』とか本作とか、春樹さんのこの手の路線を(いわゆる大作よりも)こよなく愛する者なのであります。
というわけで、かなり好きです、『多崎つくる』。 時の流れと、喪失感と、象徴的な死と、心の闇と、溶けない謎・・・、そして愛は勝つ。村上春樹的要素がぎっちり詰まっているのです。とりわけ終盤のフィンランド・シークェンスが、心震える素晴らしさでした。
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